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彼 こと七瀬翔と仲良くなるのに時間はかからなかった。
少し前までいじめられていたはずだったけど、
気づいたらみんな、部活や習い事とか友達付き合いに忙しくなり始めたのか普通になった。
翔がああ言ってくれたおかげでもあるのかも、なんて。
翔「なぁ、帰りコンビニ寄っていかね？んでそのまま俺ん家でゲームな！」
『うん！』
僕と違って周囲の人を惹き付ける魅力がある。
足が速くて、顔も良くて優しくて……非の打ち所がないとはこのことかって思うほど。
足が速いのに何で陸上部に入らないのか聞いたら、笑ってはぐらかされた。
毎日一緒にいて本当に良いのかたまに不安になる。
なんで仲良くしてくれるのか1度聞いたけど、
翔「えー、何でも良くね？ てか、俺自身が男好きになったことあるから嫌だったんだよ。
あ！くっそまたゲームオーバーだ…」
真剣に答えてるようなそうでも無いような回答が返ってきて諦めた。
それからお使い程度の任務がない時は、ほぼ毎日翔と過ごしていた。
お互いの家に行ったり、公園で遊んだり、秘密基地を見つけたり……
とはいえ翔の両親も同性愛には抵抗があるようで、だから翔は1度もその事について話したことがないらしい。
翔「だから俺はAと2人でいれば充分なんだ。」
僕をぎゅっと抱きしめてそう言われた。
あの時の体温をまだ覚えてる。
中二の冬頃、いつも通り翔の家でゲームをしていた。
翔「A、俺さー」
『んー？』
翔に教えてもらったゲームから目を離さず返事をすると、
翔「Aが好きだ。」
いつになく真剣な顔でそう伝える翔が視野に入り、ゲーム機を落としてしまった。
『ぼ、ぼくも……ぼくもすき、…』
翔「まじ！やーそんな気はしてたけど！」
『なんだそれ』
翔「あはは、けど、あーやべぇ、まじで嬉しい、」
力強く抱きしめられ、恥ずかしくて目線を下に落とすと
ゲームオーバーになった真っ黒な画面が見えた。
僕も嬉しい
と心からの言葉を言ったはずの割には、なぜか頭がすっきりしなかった。
もしこのとき、
翔の目に僕が映って無かったことに、
翔の肩が嬉しさで震えてたんじゃないってことに
気づけていたら。
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作者名：リラ | 作成日時：2023年12月14日 10時
