完璧なアイドルを落としたい。 (ページ44)

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諦められないページ44

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誰もいないと思っていた練習室に

誰かが居たという驚きと

背中合わせで掛けられた体重で

そのまま前にでんぐり返りしそうになった。

向こうもこちらの背中に、背中をあわせているので、顔は振り向いても見えない

でも少しだけ見えるボサついた髪

そして、いつも嗅いでいた香水の匂い

間宮｢………じゅ、り？｣

間違える訳がない

間宮｢……どうしたの？こんな遅くに｣

田中｢Aも遅いじゃん｣

間宮｢練習してたから、樹は帰ったんじゃないの？｣

田中｢帰って、また戻ってきた｣

顔は見えないけど

背中越しに伝わる樹の体温

久しぶりに私に向けられる言葉たち

こんな会話だけで、泣きそうになる。

間宮｢なんで戻ってきたの？｣

田中｢んー？…｣

間宮｢……なんで？｣

田中｢Aに会いに来たって言ったら困る？｣

間宮｢そ、れは｣

田中｢A、こっち見て？｣

背中の温もりが、ゆっくりと離れていって

わたしもゆっくりとそちらを見る

久しぶりにきちんと、樹と目が合う。

普段はオラついた格好なくせに

サングラスから見える目は、本当に優しい瞳をしている

危ないようで、優しい人。

間宮｢…怒ってる？｣

田中｢怒ってないよ｣

子供を慰めるかのような、柔らかい、優しい声

間宮｢ごめ、ん、いやなんか…｣

田中｢なんも言わなくていいよ｣

間宮｢でも…｣

田中｢俺、Aが好き｣

間宮｢……っ、だからそれは｣

田中｢Aは、俺の事好きじゃない？｣

ずるい、ずるい

そんな顔で見られたら、。

田中｢ねぇ、お願い、俺の事好きになってよ｣

引き寄せられて、おでこ同士が優しくぶつかる

間宮｢好きになっちゃ、ダメだもん｣

田中｢なんで？｣

間宮｢アイドルだし、｣

田中｢でも俺Aとこのままなのやっぱヤダ｣

間宮｢それは樹が諦めてよ…｣

田中｢ムリ｣

間宮｢わがまま……｣

田中｢何年好きだと思ってんの？｣

間宮｢し、知らないよ！｣

田中｢この数日、Aのこと諦めようって頑張った。でも無理だった。｣

おでこを合わせたまま、そっと目を閉じて喋る樹

かかる吐息だけで、ドキドキするぐらい

私も好きなのに。