嘘じゃない ページ28
-烏丸.side-
突然だが、俺には好きな人が居る。
その人は誰にでも優しくて、それ故に好かれて慕われる人なのだが。
今まで出会ってきた誰よりも鈍い。
「ただいま！」
『あ、おかえりなさい。桐絵、烏丸くん』
「……ただいまっすA先輩」
『外寒かったでしょー。
リビング暖かいから早くおいで』
先輩はそう言って、俺が持っていた買い物袋を持ちリビングへと持っていく。そんな彼女の後ろ姿を見つめてから、自分も靴を脱いで玉狛に上がった。
ちなみに小南先輩は支部に入った瞬間によほど寒かったのかリビングへとダッシュし、レイジさんは車を仕舞ってるのでまだ来ていない。
A先輩に次いでリビングに入ると、エアコンの下で温かい風を直に浴びている小南先輩とコーヒーを飲む支部長の姿が目に入った。
「小南先輩、エアコンの風って吸うと体に良いらしいですよ」
「えっ、そうなの！？……すー」
「まぁ嘘なんですけど」
「……だ、騙したのね！？」
『それで騙されるのもすごいよ桐絵』
こちらの様子を一瞬見てから、俺達が買ってきた食材を冷蔵庫に入れつつ楽しそうに笑うA先輩。俺はコートやマフラーを脱いでから、その背後に近付いて、1番上の棚に伸ばす彼女手を握った。
端から見れば抱きついているような体勢に、彼女は『どうしたの烏丸くん』とこちらを見て首を傾げるだけ。他に目立った反応はなし。
「A先輩、
今日も可愛いですね」
『あー、ありがとう。嘘でも嬉しいよ』
「嘘じゃないです」
『じゃあお世辞か』
お世辞でも、ないんですけど。
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作者名：-naki-
| 作成日時：2017年12月25日 18時
