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☆いじわる に【Peketan】 ページ12

だけど、彼はいつも通りじゃなかった。


なんだか、不機嫌そうな顔になってから、ぽつりと

「なんとも思わないの?」

なんて言う。

それから、

「俺が、毎日毎日、彼女のこと惚気てるの。」

と続けて、手元でシャーペンを弄んだ。

私はきゅっと唇を噛む。



そりゃ、私だって、好きな人の彼女の惚気なんか聞きたくはない。

だけど、好きな人が話しかけてくれることを嬉しいって思ってしまう自分がいるの。

どうやって、この気持ちを消せというの?


「…ねぇ。」


彼の声が遠く聞こえる。


「ねぇって。」


私は俯いた。



どうやったって、この気持ちは無くならない。

だけど報われない。

私だって、こんなに辛いならいっそ…



「ねぇってば!」


彼の大きな声と、肩を揺すられた衝撃ではっと我にかえる。

休み時間、ざわめいていた教室がしんっとなった。

そして、上を見上げると、そこには彼の揺れる瞳があった。



「俺には、彼女なんか居ないよ。」



クラスの皆の視線が、私達に注がれる。



「ずっとずっと、想ってるのはAだけ。」



その言葉は、私の鼓膜を溶かしてしまいそうなぐらい甘かった。



「Aが、好き。」



私は、この状態が理解出来なくて、とりあえず、彼の瞳に映る自分を見る。

「…本当に?」

私の口から、零れた。

彼は大きく頷き、


「本当だよ。」


そう言って、私の頭を撫でる。

目の前が滲んでいくのが分かった。

「私も、好き。」

私は、鼻と喉の奥が熱くなるのを堪えながら、そう言う。


すると彼は、私をふわりと抱きしめた。



「俺と、付き合って下さい。」



耳元で彼の声が聞こえて、私は彼の肩を抱き返す。



「こちらこそ、よろしくお願いします。」



二人の距離には十分な声量。

鼻の先が触れ合ってしまいそうな距離で、彼の微笑みが見えた。




それから、クラス中にそれが広がってしまったことは、言うまでもない。

だけど、それ以上に、私の心は幸せに満ち溢れていた。

ぱっと斜め上を見ると、微笑む彼がいる。

夕暮れ、二人の帰り道。

夕焼けは、私達のことを祝福してくれているみたいに見えた。

☆ふわりふわり いち【Masai】→←☆いじわる いち【Peketan】



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バニレ - え、とにかく全部最高なんですが……//// (2019年8月14日 19時) (レス) id: a982cf7980 (このIDを非表示/違反報告)
wakame(プロフ) - ひよさん» コメント、ありがとうございます!! ほのぼのと、ふわふわと読める感じのを目指しております! これからも頑張りますね!! (2018年1月14日 19時) (レス) id: 98da65900a (このIDを非表示/違反報告)
ひよ - ほのぼのしますね(о´∀`о)これからも頑張って下さい! (2018年1月9日 17時) (レス) id: 9013a0ca57 (このIDを非表示/違反報告)
sena_earlybirs(プロフ) - ありがとうございます!wakameさんの描くお話が本当に好きなので、楽しみにしてます! (2017年8月4日 10時) (レス) id: 165c468189 (このIDを非表示/違反報告)
wakame(プロフ) - sena_earlybirsさん» なので、またチェックしてみて下さいね!! (2017年8月2日 23時) (レス) id: 98da65900a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:wakame | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年5月28日 21時

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