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☆いつもの彼【Nndaho】 ページ2

「よっ。」

声をかけられる。

お気に入りのシャンプーの香りを感じながら、振り返った。



まただ。

またあの人だ。



同じクラスでも無いのに、私が廊下に出る度に出会う。

そして、彼は微笑むのだ。

美術部の私と、野球部の彼に、接点なんかあるわけない。



一体どうして?



「今日は、髪の毛くくってないんだね。」

彼は、そんなことを言う。

私は、それで、今日は顔の周りに邪魔なものが多いのだと、今日は寝坊したのだったと、思い出した。

ただ、頷く。

「下ろしてても可愛いよ。」

名前も知らない彼は、言った。

私の心臓は跳ねる。

それをひた隠し、お辞儀をした。

そしてすぐにでも、そこを立ち去ろうとする。





私はまだ、この気持ちに気づいてなんかいない。


気づいてしまったら…





「三上さん。」



その声にはっとしてまた振り返った。

そこにはまた、彼のあたたかい笑顔がある。





本当に、あなたのことしか見えなくなってしまいそうだから。





「…わかりません。」

私の唇は勝手に動いた。

それに、彼は目を丸くする。

「…私にはまだ。」

ぽつりと続けてみた。

私は、彼の揺れる瞳を見た。

「まだ、わからなくてもいい。」

瞳はだんだんと近づいてくる。

私は、少し長めにまばたきをした。

気が付けば、彼はほんの1m先に立っている。

彼を見上げながら、あぁ、意外と身長が高いんだなぁと思った。



「そのうち、気付かせてあげる。」



そう言った彼の無邪気な笑顔が、私の心の扉を、とんとんと叩く。




彼の名前を知るまで、


あとほんの数秒。



彼の気持ちを知るまで、


あともう数ヶ月。




私の初恋だった。

☆大江戸 壱 【Silk】→←☆日曜日【Silk】



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バニレ - え、とにかく全部最高なんですが……//// (2019年8月14日 19時) (レス) id: a982cf7980 (このIDを非表示/違反報告)
wakame(プロフ) - ひよさん» コメント、ありがとうございます!! ほのぼのと、ふわふわと読める感じのを目指しております! これからも頑張りますね!! (2018年1月14日 19時) (レス) id: 98da65900a (このIDを非表示/違反報告)
ひよ - ほのぼのしますね(о´∀`о)これからも頑張って下さい! (2018年1月9日 17時) (レス) id: 9013a0ca57 (このIDを非表示/違反報告)
sena_earlybirs(プロフ) - ありがとうございます!wakameさんの描くお話が本当に好きなので、楽しみにしてます! (2017年8月4日 10時) (レス) id: 165c468189 (このIDを非表示/違反報告)
wakame(プロフ) - sena_earlybirsさん» なので、またチェックしてみて下さいね!! (2017年8月2日 23時) (レス) id: 98da65900a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:wakame | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年5月28日 21時

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