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少し後ろで、騒ぐ奴らを横目に空を見上げながら歩いているアーシェの方へ向き指輪を差し出した。
手放す直前、どこか嫌〜なような、不気味な気配がしたのだが、アーシェの手元に完全に戻るとその感じは無くなった。心做しかアーシェの顔が青くなっているような気もしたけれどすぐさまいつも通りに戻っていたので、疲労からだろうか、と片付けた。
「……どう、いたしまして」
「ん？どしたん？やっぱ顔色悪いな」
「どうしたも何も……」
貧血に決まってる、とまたもや怪訝そうな顔をしながらこちらを捉える瞳は、少しずつ重力に従い崩れ落ちて行った。
………崩れ落ちて行った？？？？
「だー！！！！怪我人なん忘れとった！！！！なんでお前そんな涼しい顔しとんねん死ねや！！！！」
「ぅ……るさ……お前が死ね……」
「えーっ！？アーシェちゃん倒れとる！！だからロボロは童帝やねん！！」
「おい鬱殺すぞ」
寸前で抱き寄せた肩を持ち直し抱えた。保健室に行くのは少し気が引けるが自分が怪我人という訳では無いので……多分大丈夫だろう。脳裏で神、と書かれた面布をつけた男がにこにことこちらに手を振っていた。やっぱり行かないでおこうか。
「……ぅ」
抱えているアーシェが額に冷や汗を滲ませながら呻いた。
自分も心がない訳では無い(無いのはコネシマ)ので、こうも苦しんでいると、罪悪感というものが浮かび上がってくる。
「悪かったなぁ」
「え、ロボロまさか殺す気で打ったん？あれ」
「見とったん？」
「や、とんちが、あれはロボロやなって」
「あー……そうか」
トントンは探知が得意なんだった。納得するも、鬱からの問いにどう答えようか、と考える。焦りと怒りと嫉妬がごちゃ混ぜになってやりました、なんて言えない。そもそも一人の女子、それも新入生にそんなことをぶつけるな、という話だ。
「色々あったんや。ほら、拳で語り合う的な」
「それは無理があるんちゃいます？」
「だからロボロは童帝なんやでショッピ」
「や〜俺らには理解出来ませんねチーノさん」
「生意気な後輩やな」
少し離れた訓練所から校舎は数十分ほどかかる。しばらく歩いていると、すぐそばで寝息が聞こえてきた。アーシェは眠りについたようだ。殺されかけた相手の胸の中で眠るとは相当肝が座っているのか警戒心が浅いのか。
先程よりも幾分か穏やかになった表情を見ながら、寝顔は幼い子供のようなあどけなさがあると思った。
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作者名：w579hgtvbj | 作成日時：2024年1月13日 18時
