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⠀ ロボロさんが俺たちの後ろにいる魔獣を視界に捉えると顔を大きく顰めた。特に何かを言う訳でもないが、その顔からは副音声で「余計なやつ連れてきやがって」などと聞こえてくる。
「あのさぁ、変なやつ連れてこんといてくれんかな」
「えー！？なんてロボロ！？」
「この人自分の声でかすぎてなんも聞こえてませんね」
⠀ とりあえず森の中を駆けながらどうにか倒そうと考える。やはりロボロさんはかなり魔力を消費しているらしく、二級となれば倒す算段がないんだそう。
「うーん、もうちょいで回復しそうやねんけど、なにせ場所が悪いわ」
⠀ ロボロさんは居心地悪そうに眉を下げながらため息をついた。今は幾許の油断も許されない。少しの判断ミスが命取りになる。
「もし魔力が増えるとするなら、勝てる算段はあるんですか？」
⠀ 斜め後ろを走っていたアーシェは覚悟を決めたように言った。
「ある」
⠀ ロボロさんがそう言うと、アーシェはいつものような温和な笑みではなく、いたずらっ子のような悪い笑顔を浮かべた。
⠀
「よし。ロボロ、手出せ」
⠀ そう一言言うと、プツ、と糸が切れたような小さな音がした後、キラリと光る何かが横を通り過ぎ、ロボロさんの手の中に入った。
「なんやこれ」
⠀ それを手の中に収めたロボロさんは不思議そうに、光を反射させて輝くそれを眺めた。それは指輪だった。
「−−−−私の魔力」
⠀ 魔力の受け渡しなんか聞いた事がない。しかしアーシェが嘘をついている感じはしないに加えロボロさんの魔力は回復したらしい。
⠀ 魔獣はその指輪を見つけると、急に凶暴化したかのように動きが速くなった。
「ええぇ？なんで急に速くなるん？」
「算段があるならはやくしてもらえますか。今はとやかく言ってる暇なんてないんです」
⠀ 魔獣のスピードが速くなった事で後方のすぐそこまで脅威が迫る。眼前に木が倒れ落ちてきてギリギリのところで避ける。
「その指輪を貴方が持っている今、私の魔力はゼロに等しい」
⠀今、なんて。
「いいですか。それがあってもチャンスは一度きり。一回以上威力の大きい魔法を発動させるなら負荷がかかってその指輪は壊れます。最悪の場合やむを得ませんが、出来たら壊れないようにしてもらいたい」
⠀アーシェは澄んだ夜空のような瞳で続ける。
「それは、私の大切なものなんです」
⠀ それは、何処か寂しさを感じる声だった。
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作者名：w579hgtvbj | 作成日時：2023年12月24日 11時
