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⠀手を借りてなんとか立ち上がると、近くで爆音がした。爆風で枝や木が飛んでくるため目を細める。
「派手にやってますね」
「あ、戻すんや」
「すいません、取り乱したもので」
⠀アーシェは顰めていた眉をすん、と戻し口元に緩やかな笑みを浮かべた。先程の怒気を孕んだオーラはすっかりと消え去った。切り替えはやいな。
「あれが通常運転ではないですからね。勘違いしないでください」
「へいへい」
「は？舐めてるんですか？」
「……なんか、やっぱ思ってたキャラとちゃうわ」
⠀もっと守って守って、とでも言いそうな女の子らしい性格だと思っていたのだがそうでも無いらしい。しかし他の奴らに比べると俺に対する当たりが強い気がした。それほどの事をしたのだから致し方なしなのだが。
⠀アーシェは苦笑いしながら爆音のした方を見た。
「これ、戦闘不能にするまで終われないんですよね」
「お、おん、そうやな」
⠀頭から流れた血が額を通り、地面にしたり落ちる。アーシェはそれを気にも止めず俺に話しかけてくる。
⠀……いやいや、これ戦闘不能ちゃうん？もしかしてまだ戦う気なん？失血死しいひん？
「じゃ、闘りましょうか」
⠀そう言い腕まくりをして準備運動を始めるアーシェに後ずさる。
⠀正気かこいつ。
「ちょっっとまって！？本気でやる気なん！？アンタ鏡見た方がええで！？」
「至って正常です。普通ですよ」
「人によって普通って色々あるとは思うねんけど、それにしても普通ちゃうと思うわ」
「こんなんで戦線離脱したらそれこそ殺されかねません」
「どんな環境！？ここ軍施設とでも思っとんの！？」
⠀ぽかん、とした顔で見つめられるが、俺がおかしいのだろうか。こんな野蛮な女が居ていいのか。ゾムの姿で会った時でさえまだ大人しかったし、もっと穏やかで戦いとは無縁の乙女を想像していたのだが。死に面して尚余裕に笑っているそれは、どこかの戦争魔人を彷彿とさせた。
「ええやんやったるわ！」
⠀熱意のある戦いは嫌いでは無い。己も裾を捲り、気合いを入れた。
⠀だから童貞やねんで。そんな言葉が脳裏に響くが、そんな事はどうでもいい。
「この傷、倍にして返します」
⠀勝気に笑い、アーシェは魔法陣を展開した。
⠀魔力が練られ、周りの重力感があやふやになり髪が風に吹かれたかのように揺れる。
「後輩には負けられへんな」
⠀両者、戦いの準備が整った。
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作者名：w579hgtvbj | 作成日時：2023年12月24日 11時
