裏切られたけど転生トリップしました【d!】 (ページ36)

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「あの子身のこなしは目を見張るものがあったけど、魔法の才は感じられんかった。まるで最近魔法を知ったみたいな使い方やってん。あれを倒すくらいの実力は、今はまだなかったんとちゃうかな」

⠀青年は知らない。これからも知ることはないかもしれない。
アーシェが魔法を知ったのは二月ほど前で、その印象は正しかったという事を。

「ぇ、死んでもうたん……？」
「いやいや、死ぬわけないやろ、こんな」
「ぉ、俺のせい？俺が行こうなんて言ったから」
「チーノのせいやない。こんなん、誰にも予想できんわ」

場が哀愁漂う雰囲気になる。チーノは責任に追われ、焦点が定まっていない。青年はあちゃぁ、と肩身狭そうに苦笑した。

しかし、あれ？とコネシマが声を発した。

「結局誰があの宝石壊したん？」
「確かに」

その場の全員が首を傾げる。

「私」
「なっ！？」

今度に首を傾げるのは、アーシェだった。皆が何故驚いているのかも分からないし、チーノが泣きそうな顔をしているのかが理解出来なかった。おまけにショッピは「生きてた……」と、安堵の息をついており、本当に何があったのだろう、と目を瞬かせるのだった。
そしてコネシマがさけぶ。

「ゾム！！！！」
「チーッス」

アーシェの後ろに居たゾムを見つけ、青年は完全敗北だ、と諦めたような顔をして夜空を見上げた。青年の黒髪と、貼り付けられた面布が風に揺られはためく。見えていなかった目がそこから覗き、その瞳は満月を捉えていた。

「おま、馬鹿野郎ッ！なんで降霊術なんかすんねんッ！」
「え、そんなんしたっけな？」
「覚えとらんのか！？元凶お前が降霊術した事なんやからな！？」
「嘘やろ！？俺まじで記憶にないで！？」
「よう思い出してみい。お前脳溶けとんちゃうん」

そう言われゾムはうぅん、と首を捻って思い返してみる。

「そういや、誰かに頼まれて行ったような……」
「誰やソレ！？」
「それが思い出せんのや」
「一番重要なとこやろお前ェ！」

戦犯やぞ、とコネシマはゾムを羽交い締めにする。
ゾムはぎぶ、ぎぶ、と笑いながらコネシマの腕を叩いている。

「俺の負けやね。上手くいったと思っとったのに」
「相手が悪かったっすね。ゾムさん選ぶんセンスないわ」
「いやホンマに。可哀想なってくるわ」
「おい新人組、俺が貧乏くじみたいに言いやがって。明日の昼覚えとけよ」
「ふはは、楽しそうやなぁ」

青年は、その様子を懐かしそうに眺めていた。