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「そっちからは此方の様子が分かるんですね」
「なんとなくな。でも、どないして出よかな」
「一度手を突っ込んでみます」
「おー、頼むわ」
そっ、と鏡の中の自らの手に触れる形で、鏡の中に手を入れようとする。
すると、とぷん、と水面が反響するように、指先が鏡に吸い込まれた。
「……私の指、見えてますか？」
「おお、ちょこっっとだけ見えとんで」
「これ以上は入れれませんね……ロックがかけられているみたい」
「そりゃ、そう簡単には出られんか……」
もし簡単にこの人を出せるのなら、幽霊、場合が悪ければ悪霊さえ簡単に出られてしまう。
生者と死者とじゃ場合は違うだろうが、生者がもしも間違えて入ってしまった場合の対処法もあるはずなのだ。
そもそも、この人は”生者”なのか？
私が出そうとしているこの人は、もしかしたら死者なのか？それはそれで面白いのだが。
「そういえば、貴方は誰ですか？」
「ゾム」
「え"っっ」
「おうおう、なんや人を敵みたいに」
なるほど、この人をここに閉じ込めて偽物は暴れていたのか。
「さっき、貴方の偽物が−−−」
ぐわんぐわんと脳に響くような鐘が鳴り響く。
「もう三時かぁ……」
この鐘はどうやら三時を知らせるもののようだった。
「三時……？三時にしか降霊術は出来ん……？」
鏡の中でゾムはブツブツと何かを言っている。
ひとしきり何かを言ったあと、そういう事か！と手を叩いた音が聞こえた。
「なあお前！今手ェ突っ込んで見てくれん！？」
「え？はい……………ってええ？」
言われた通りに手を鏡に触れると、先程までと違いみるみると、ロックが外れたように手が吸い込まれていく。
「やっぱ時間制やってんな！！これ、俺の手！引っ張って！」
「よっ、と」
後ろに体重をかけて掴んだ手を引っ張ると、フードを被った長身の青男がでてきた。
先程の偽物と瓜二つである。
「出れた出れた！助かったわァ、ありがとうな！」
「いえ。それよりも頼みたいことがあるんですが」
「おん！なんでも言ってや！」
にぱっと向日葵のように笑う、頼もしそうな青年に、君の偽物がいるからぶっ殺してくれ、そう言おうとすると、瓦礫の向こうから獣のような唸り声が聞こえてきた。
「……今、なんか聞こえたよな」
「聞こえましたね」
その唸り声はみるみる大きくなる。
「やばっ……はよ上行こ」
「命日かな……」
その言葉に強く頷き、階段を静かに駆ける。
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作者名：w579hgtvbj | 作成日時：2023年12月24日 11時
