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すると紙に血が染み込んでいき、書類は白い書類から赤い書類になった。
「わーい、魔法士候補を抑えたぞー！あ、あと入学したら寮生活になるからね」
「それについては全く構わないのだが、実はそれまでの拠点がない」
「わーお、本当に捨て子。ま、仕方ないか」
分かった、と肩を竦めながら男は手招きして奥の部屋に入っていった。
続くように扉を開けると、そこは金庫のようなところだった。盗賊ならば血が騒ぐような景色に目を瞬かせていると、それを制止するような視線がとんだ後、諭される。
「流石に在学生が居る中でまだ合格もしていない人間を入れるのは規則的にアウトだからね」
そう言いながら男は山から何かを探し出す。
山積みの中から出された金貨を差し出され、それを見つめる。照明に反射し、きらりと輝いた。
「これ、貸してあげる。期限は卒業後の一年以内。ちゃんと利子つけて返してねー、キミは見込みがあるから特別。普通なら魔法で溶岩の上にほっぽりだすとこを助けてるんだから、感謝してね」
「ああ、感謝する」
とんだ出費だ、と男は近くにあったソファーに身を投げ出し脱力した。
私を連れ出したのは自分なのだから自業自得だろう、と言う言葉は呑み込んだ。
「そういえば、キミって何歳？」
「22」
「……ん？いや、違うでしょ」
「ん？いや、だから22」
「いや……いやいやいやいや。ちょっと待って、鏡持ってくる」
信じられない顔をされるが、自分は童顔だと思ったことは無い。言われたこともない。
確かに舐められることは多かったが、それは男ばかりの環境で女一人であったからで、別に年齢なんて関係なかった。
男が持ってきた手鏡で自分の姿を視認する。
「………ん？」
「絶対22じゃないでしょ！？！？」
「だな」
鏡の中の自分が眉を顰めた。自分がどういう状況に置かれているのか、ますます分からなくなった。
若返っている。
目にはうっすら隈が浮かんでおり、そしてこれは病気がちな兄に変わって前線に出ていた頃だ。
髪は長いことからまだ直行隊だった時だろう。邪魔なため短くするように、と言われていたがせめてもの犯行として伸ばしていたのを覚えている。
あまり思い出したくない、嫌な記憶の年齢に戻ったらしい。
「……16だ」
「なんて？」
僅かに声が震え、男には言葉が届かなかったらしい。
手鏡を強く握りしめ、もう一度声を発した。
「今、私は16だ」
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作者名：w579hgtvbj | 作成日時：2023年12月24日 11時
