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−−「イイなぁ、楽しそうで」
そう言ったのは、一体誰だった？
思考の渦に巻き込まれそうになるのを必死に抑え込む。
恐らくシャオロンの言っていたあの鏡は死者の世界と繋がっている。そして鏡の前を通った時、連れ込まれでもして、今ここにいる。それだと以前から記憶が曖昧なのが合点行かないが、今はこれが一番有力。
−−ならば、ここは鏡の中？
「痛っ！」
すぐ近くから、誰かの声がした。
✧︎
暗転した世界の中、埃っぽい環境で意識が覚醒した。
どこを見渡しても瓦礫。基地のような酷い有様にため息しか出ない。
…………ん？
目の前の重大な事態に目を向けており気づかなかったが、後々怒られるのは自分達なのでは？
そう気づくと、アイツが憎らしくて仕方がなくなってくる。私はもう既に理事長に貸しがありこれ以上返すものが多くなればいよいよ不味い。
もしアイツが金を持っていたら、剥ぎ取ってやろう。
決意がみなぎった。
ここに落ちる前、この下は鏡があると気がついていたが、いまそれを見に行った所で何も無いだろう。
瓦礫を登ろうと足を踏み出すと視界に鏡が入り込んだが、さっさと合流して帰ろう、と其れをスルーする。
「……ン？」
鏡から、間抜けな声が聞こえたのは気の所為だろうか。
誰か中にいる？いや、鏡の中にいる訳がない。まさか、と首をふると、力を抜いてしまったせいで瓦礫の破片で足を滑らせた。
「痛っ！」
落ちた拍子に足を捻る。ろくな事がない、早く帰りたい。はぁ、とため息をつくとやはり声が聞こえた。
「誰かそこにおるん？」
「おるよー」
「下手な関西弁使わんといてくれん？腹立つわ」
「ごめんなさい」
やはりその声は鏡の中から聞こえてくる。
まさかのまさかだ。なんでもありなんだな、この世界は。
まるで御伽噺のような話に、鼻で笑う。
「もしや鏡の中にいますか？」
「おー、多分な。俺も気づいたらここにおってんよ」
「奇遇ですね。私も気づいたら落とされてましたよ、ムカつく」
「分かるわァ、自分知らんとこでコソコソされんの気ぃ悪いわ」
とりあえず外に出す算段を考えるか、と鏡の前に立つ。鏡に映るのは、前の世界では泥や血でまみれていた衣服が、埃で汚れてはいるもののほつれ一つもない姿。曇りまくっていた瞳は幾分か晴れている。ここに来てしんどいことなど経験していないからだろうか。
「あれ、お前もしかして鏡の前立った？」
「はい」
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作者名：w579hgtvbj | 作成日時：2023年12月24日 11時
