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逃がすわけないやろ、と言いながら走る速度を加速させる。
今度こそ追いつかれたら本当に殺されそうだ。
しつこいな、と思っているとショッピが後ろを振り返りいきなり立ち止まった。
「ちょ、何して−−」
「やっぱアンタ、ゾムさんちゃうやろ」
︎ ︎ずっと思っていた事を打ち明けた時のような、疑問がやっと解決した時かのような、納得のいった表情が、ショッピにはあった。
「お前、誰やねん」
鋭い、全てを見透かすような目で睨むショッピの向かいには、俯いて黙り込んだゾム−−−ではなく、”ナニカ”がいた。
「なんなん………ムカつくわァ」
︎ ︎淀みなく形を綺麗に保っていた魔力が、揺らいでいる。
そのナニカは悔しそうに拳を握りしめ、力を入れすぎたのかその隙間からは血が止めどなく溢れている。
「ムカつくムカつく……みんな死んでしまえ」
フードの隙間から見えた瞳が意味深に輝いているのを見つけると、突然地面が崩れ始めた。
「ああ、そうや……」
そういえば、この下は−−
「知りたいんやったら、一回死んでくればええねん」
ナニカは整った顔を歪にゆがめて笑う。その顔は、子供が泣いているようにも見えた。
暗転。
「アーシェ！」
ショッピの声を最後に、私の意識は、そこで途切れた。
◢◣
side green
︎ ︎気がついたら、上も下も分からない空間の中にいた。
浮遊しているような、妙な違和感を感じながらクルクルと回って、まあどうにかなるか、と楽観的に考えていた。
出ようとする努力は必要だろう。しかしここに来る前のことなんて何も覚えていないのだから、仕方がない。
自分の最後の記憶は、シャオロンが鏡の降霊術をしている時で−−−−……？あれ？
良く考えれば、そこから変だ。
自分はあの話を知っているはずなのに、どうしてあんな返事をしたのだろうか。
いつもならば、そんな誰もが知っている話をするなんて阿呆だな、と揶揄うはずだろう。
︎ ︎恐らくそこら辺から意識が曖昧だった。
寮に帰った記憶が無い。授業をサボった記憶が無い。その日は自分が好きな飛行術の授業だったはずなのに、受けた記憶が無い。
所々しか、覚えていることが無い。
何故？しかし思い出そうと脳を遡ると、どれも朧気だが思い出せる。確実に思い出すことが出来ないのは、寮に帰る前、シャオロンの言っていた鏡の前を通ってから。
「ン……？」
俺は何を忘れてる？
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作者名：w579hgtvbj | 作成日時：2023年12月24日 11時
