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「撒いたか……？」
邪悪なオーラを孕んだ魔力反応が消えると、動かしていた足を止めた。あれと遭遇するのはもうごめんだ。
「何があったんですか部長。嫌われるような事したんですか？」
チーノは額に浮かんだ汗を掌で拭いながら聞いてきた。
「いや、多分ちゃう。お前もあいつの目を見てみれば分かるわ」
話しかけた時の、あの振り返った時の、覗いては行けないものを見つけてしまった時のような。
−−−「ぁぁあ？」
思い出すだけでも、背筋が凍りそうだ。
「あれは、ゾムやけどゾムやない」
「なんやそれ」
仕草も声も見た目もゾム。
然し、己の本能と瞳が、あれは他の何かだと叫んでいる。
そしてこの前、巷で騒ぎになっていた事件を思い出し、あ、と小さい声を洩らす。
「多分、乗っ取られとる」
✧︎
「一旦落ち着きましょゾムさん」
にじり寄ってくるゾムに、ショッピはまあまあ、と宥めるように言う。
「俺はずっと落ち着いてんで。じゃ、
わくわく、といった待ちきれない子供のような仕草をしながら、手に鎌のようなものを顕現させた。魔法とはそのような使い方も出来るのか。
「ですよねー」
試合のゴングが鳴り響いた。
「ショッピ、私が注意を引きつけるから裏とって」
「分かりました」
杖を出して魔法陣を発動させる。
少しの間動きを止められればいい。ゾムが壁を蹴り着地した、その着地地点を予測して魔法陣を形成した。
ゾムが魔法陣に気を取られた隙にショッピが背後に周り鳩尾を蹴り気絶させようとした。
しかし、ゾムはカウンターをし、宙で一回転しながら距離を離す。
「やっぱ、ゾムさんの反射神経なら避けますよね」
「意味ないわそんなん。殺す気でこいや」
「一筋縄ではいかないか」
ショッピは悔しそうに顔を歪める。
魔法陣から電気を流し意識を飛ばそうとするが、効いている様子は見られなかった。
慣れないことはするべきでは無い、と杖を直し、ゾムの間合いに入った。
放たれた拳を避け姿勢を低くして足に蹴りを入れる。
「お前、結構動けるやん」
ゾムは関心しながら体制を立て直した。直ぐに蹴りが飛んでくるため眼前で避ける。
「魔法の才能は無いけどな」
これでは埒が明かない、と思い少しづつ距離を置く。
「キリがない。体力だけ消耗するのは悪手だね。一旦引こう」
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作者名：w579hgtvbj | 作成日時：2023年12月24日 11時
