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「僕もその中の一人さ」
「ふーん、そうなんだ。憧れの人なの？」
「ああ、憧れずにはいられないさ」
「すごい人なんだね」
隣の生徒は懐かしむように微笑んだ。
フューラー、というのがどのような人物なのかは分からないが、不特定多数の、言い方は悪いが、信者と言える人間が居るように思える。
「……ほらほら、格好良い人だろ」
高揚を隠すことをせずに息を荒くし頬を紅葉のように染めた生徒が、指を指すのは失礼だと思ったのか控えめに手を向ける。
「そうだね」
フューラーが堂々と歩きながら壇上に上がり、マイクの設置された卓に手をついて、まるで演説のように話し出す。
どこか重圧感のあるバリトンボイスに照明に照らされ輝く金髪。
挙動、声、言動、全てに人を寄せ付ける何かがあった。
「……あれこそヒトラーのようだな」
「ヒトラー？誰だそれ」
「いいや、何でもないよ。カリスマ性がある人なんだね、生徒会長って」
「だろだろ、君話が分かるね！」
総統さながらのオーラを放つ生徒会長を見ながら、あの憎き男を思い出し、人知れず拳に力を入れた。
「それほどでも。これからの行事が楽しみだね」
「ああ、それはもう、待ちきれないさ」
愉快そうに笑う生徒は、心底満足そうだった。
知らず知らずの内に人を魅了してしまうのは、上に立つものの特権なのかもしれない。恍惚とした、生徒会長を夢中で見る生徒を見て、そう思うのだった。
＿
「水晶に写し出された字の教室に入ってください。上級生が案内しているので、くれぐれもはぐれないように」
Ｂと映されていたのでＢの教室に入る。来る道中、人だかりが出来ていたのだが、教師の言っていた”上級生”の中に生徒会長でもいたのだろうか。
「アーシェ」
教室に入り適当な席に腰を下ろすと、ふと隣に誰かが腰かけ、名を呼ばれた。
「さっきぶりだね、まさか同じクラスになるなんて」
「ほんまほんま！嬉しいわぁ」
「私も嬉しいよ！頑張ろうね」
チーノはどうやら友人とクラスが離れてしまったらしく寂しい、としょげていた。
「基本的に授業はＡクラスと合同って言ってたよね」
私がそう言うとチーノはAクラスには離れてしまった友人がいるのだと、人懐っこい笑みを浮かべて嬉しそうに言った。
＿＿
翌日、荷物を片付けながら話しかけた。
「一番初めの授業は薬草学らしいよ」
「へえ、そうなんや」
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作者名：w579hgtvbj | 作成日時：2023年12月24日 11時
