裏切られたけど転生トリップしました【d!】 (ページ1)

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「He's a hero!」
「Glory to heroes! It's finally finished!!」

︎ ︎ ︎ 第一次世界大戦は、多くの犠牲を払った後収まりを見せた。戦争によって数多もの人間が天寿をまっとうし国に命を捧げたが、ある意味遺された人間の方が辛い、というのはあながち間違いではない。

「поднимайте свой(クソ喰らえ)」

壇上で歓声を朗らかな笑みで受け取っている最高指揮官を、絹のような繊細な髪をした見た目麗しい女が母国の言葉を呟きながら睨んでいた。

曰く、ヒトラーのように。曰く、イエス・キリストのように。

「He's a great commander!」
「His charisma even reaches that of Hitler!!」

︎ ︎ ︎全て最高指揮官の男に向けられた言葉であるが、
女は祝福するどころか、ああ、お前はそういう奴なんだな、とただただ幻滅しているような、軽蔑したような目をしていた。

無理もない、本当の指揮官は女であるのだから。
︎ ︎ ︎簡潔に言えば女は裏切られたのだ。恩を仇で返すなんて、本当に底が知れるつまらない奴だと撃ち殺してやりたくなるが、英雄を殺してしまうとたちまち戦争は勃発し民達は縋るものがなくなってしまう。

裏で作戦を考えたのも指示を下していたのも女だ。
それなのに誰も気がつかない。

別に信頼がなかった訳では無い。

上からの圧力だ。
隠蔽でも暗殺でも何でもござれ、汚れ仕事はやってきた。
そして次は女の番が回ってきた、という単純なこと。
すんなり受け入れた自分にも反吐が出そうなほど腹が立つ。こんな国にくれてやる忠誠心なんてクソほどもないくせに。

信頼出来る友人も家族もみな死んだ。殺された。

ならばもう、やることは決まっている。

▽

︎ ︎ ︎手足が氷のように酷く冷たく、息を吐くと白い蒸気が目に見えて霧散したのが分かる。
身の危険を感じるほどの寒さを感じ、そろそろ建物の中に入らなければ、と思案するも追い出されたばかりで、家の中で暖かいクリスマスを過ごすのは望み薄であることは明白だ。

「Hey mom, is she okay?」
「Don't look at it」

自分は鑑賞の対象にもなり得ないそうだ。
現在はかろうじて壁にもたれて座り込んでいる状態だが、いつ頬が地面と面するのかは分からない。

今眠ってしまえば、死んでしまえるんだろうか。

そんな、まるで戦時中の、前せんにいたときのようなことをかんがえながら、きょうも、ねむりつづけるのだ。

ああ、きょうもしねない。