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俺の答えを聞いた久遠クンは、目をぱちくりさせたまま黙ってしまう。
放心状態というか、now loadingって感じだ。
「んだよ、お気に召さなかったかー?」
「えっと……ね、そういうのじゃなくて、びっくりした…のかも?」
どっちだよそれ。そんな言葉を飲み込んで軽く相槌を打ってやる。
「なんかね、おれとお話ししたい人ってあんまりいなかったから」
「心配する人も?」
「多分いなかった……かな? よく分かんない、おれはハルモ先生みたいになんでも知らないから」
知らないが多い事しか識らない久遠伊吹が唯一真に理解していることは、きっと『人は殺せば死ぬ』ことだろう。
経験したから理解できる。人を躊躇なく殺せることは異常だ。
そして、その異常は幼い時に染み込ませれば常識になれる。常識を知れば、他に意識を割く意欲も薄まる。
「別に俺様はなんでもは知らない、知ってることだけだ」
何も知らない、無知で純粋無垢な色が白とは限らない。
混じりっ気のない色は、どんな色でも無垢である。
「俺様が教えてやるから、これから知ればいーんだよ。教えてやりたい、話したい、そんな我儘に付き合ってくれ」
その色は、本人が選んだ色ではないのだから──色々と知っている大人が、色を教えて知って、選択させてあげなければならない。
これはきっと、人として正しいことなのだ。
「……! うん、わかった付き合う! たくさん教えてね、おれたくさん覚えるから!」
天真爛漫、向日葵みたいな笑顔の子犬が元気よく返事をした。
「よし、じゃあマイクラやろうマイクラ。食事と睡眠の大切さが分かるぜー」
「ゲーム? わーい、ゲームするー!」
「うぇーい〜」
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作者名:シロツメココロ | 作成日時:2024年3月19日 14時