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さて、食育指導の次は睡眠指導だ。
眠く無いから眠らない。偶にならいいだろう。
が、常習犯では生活リズムの乱れが文字通り命取りになる。
「だいじょーぶだって、殺気はおれ敏感だもん。においでね、わかるの！」
「だーかーらー、分かっても反応できなきゃ意味ないのー。確かに久遠クン身体能力めちゃくちゃ高いけどね？ 体調は万全な方が安全なの、分かる？」
「ばんぜんがわかんない……」
がくり、思わず項垂れてしまう。
「……思わずお手上げしたくなったぜ。あー、万全って言うのはぁ…」
お手上げバンザーイ！と、投げ出したい気持ちが少しは湧いてくる程に、久遠クンは幼稚である。
危険を知っても、危険を識らない。
危険＝危機＝危ない……こんな方程式もどき程度にしか感じてないのだろう。危なっかしいにも程がある！
危機察知能力があっても危機感がなければ意味を為さない。所謂、宝の持ち腐れって奴だ。
そんな俺の態度を見てか嗅いでか──久遠クンは首を傾げる。
「先生って心配しょーだなぁ、なんで心配するの？」
「はぁ？ そりゃー……なぁ、それは…」
自分でも驚く程に言葉に詰まった。詰まったというか、考えた。
コイツにはどう言えば正しく理解させられるのか、と。
自他共に認められるほど、俺の言葉は難解である。
俺にだけ分かればいい、俺の言葉が分かる奴にだけ分かればいい、分かろうとする奴にだけ、分かりにくくて
屈折した思考なもんで、舌すらも脳すらも絡まった俺には、お世辞も皮肉もアドバイスも何もかもを分かりにくくさせる。
一種のストレス解消で、癖みたいなもので、俺のアイデンティティなのだが……こーゆー時は中々に困ってしまう。
そうして唸りながら少し悩んで、少し頭を捻って、口を開く。
「そりゃあ、俺様の自己満だぜ。君にまだ死なれちゃ困る、大いに困る。何故なら──」
「なぜなら……？」
「俺様が、まだ話し足りないから」
そう言い放てば「……それだけぇ？」と更に首を傾げるので俺も「それだけー」と真似してみたが……
むむ、物凄く分かりやすく伝えたはずである。
何事もならぬ、何言も屈折する俺であるが、それと同時にできる男でもあるので、普通の発言もできるっちゃあできる。できる男なので、できるのだぞ。
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作者名：シロツメココロ | 作成日時：2024年3月19日 14時
