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「ハルモせんせーい! おれ、きたよー!!」
保健室の扉がまぁまぁ勢いよく開かれ、あまりの唐突さに食べていたポテトフライ(チキン味)がピシリと割れる。
……危ない、もう少しで粉々になるところだった。
ふぅ、と一息付いて、俺は扉を見る。別に見なくても、舌足らずに「ハルモ先生」と呼ぶのは一人なので誰か分かるのだが。
ひらりと手を振り、出迎えるために椅子を引いてやる。
「おー、久遠クン。きちんと来れて偉いねー」
「うん! だってシドー受けたら言葉教えてくれる約束だもん」
ふんすとやる気を出す子犬な生徒は、果たして指導の意味を分かっているのだろうか。
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「──って事で、取り敢えず豆腐と豆苗は冷蔵庫に常備しとけー。あと俺様が作った奴も乗せて食べろよー」
食育指導初回恒例のさくら大根を齧りながら、今回俺は冷や奴のレシピについて説明していた。
塩もみしたきゅうりとキムチに、焼肉のたれ、醤油、韓国海苔、ごま油。混ぜるだけでちょーうめーオカズの出来上がり。
取り敢えず食べさせてやったら「シャキシャキするね!」との感想。
キュウリだから当たり前なんだよなー、とか。わざわざ食感強いの選んだんだよなー、とか思った。
まずは噛む事の大事さを、食への興味が薄い奴には覚えてもらいたいものだ。
……嗚呼、物理的にコイツは薄いか。というか無いか。
「冷蔵庫の中身なくなったら来いよー、ていうか暇さえあれば来い。俺様が食べさせる」
「えー、別におれ、そこまで腹ペコじゃないよ?」
「来たら言葉いくらでも教える」
「おれなんだか腹ペコになれる気がする!」
食欲はなくとも、欲には忠実らしい。なんとも子犬である。
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作者名:シロツメココロ | 作成日時:2024年3月19日 14時