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「俺、思うねん……」
とある日の保健室にて、真剣な面持ち(多分)と声色で、狐面の男は言った。
「俺がモテへんのって、世界がまだ俺のモテ力に追い付いてへんからってな！ どやぁ…」
訂正する、狐面の男──伏見和成はそんな事をほざいた。
器用にお面を顔が見えないようにズラしながら、俺と蒲焼さん太郎を食べていたら急にこれだ。
狐面で見えないからとわざわざ声を出すあたりウザさに拍車をかけている。回し蹴りを喰らわしたいと思う。
だがまぁ、嫌いではない。嫌いではないが、
「伏見サン、それは俺様でも引く」
一瞬宇宙を背負ったからこのくらいは言わせて欲しい。
そんな俺に泣き真似をしながら絡んでくる伏見サン。
「引かんといてや晴厶君〜……、独身仲間やろ？ 俺の気持ち分かるやろ？」
「そーですね、分かりますん」
「それどっちやねーん」
伏見サンは偶に、遊びに来たかと思えば常連のように寛ぎ、しかも唐突に謎の発言をしてくるよく分からない客人である。
まぁ扱いは分かっているので適当に会話を躱して、玉ねぎかキャベツ、今度はどちらの太郎を食べようかと悩むことにする。
そんな俺に文句も言わずに伏見サンは
「晴厶君知っとる？ 蒲焼きさん太郎も焼肉さん太郎もBIGカツもイカ粉末で出来とるんやで、ほんまヘルシーな詐欺よな。どやぁ…」とか謎雑学を披露してまだドヤっている。
「まぁ美味いから食べ過ぎんやけど。美味すぎるぞ反省しろ、太ってまう」
からの高速手のひら返し。
太るとか言っといて、体格からして筋肉質だし脂肪とか悉く燃えているんだと思うとムカつく。こちとら筋肉落ちてるってのに……小手返しでも喰らわしてやろうかと思うが…
まぁ、嫌いではない。嫌いではないのだ。
単純に辛辣な態度で接してもいいかと思うだけで。
感情豊かなお陰で、狐の面で隠れた表情も何となく分かる、それが何かもどかしく、丁度良い距離のような気もする。
それがムカつくなーとか、気になるなーとか、秘密主義とかカッコつけて自画自賛する癖に、たまに自虐をすんなり受け入れるとことか、
ほんと、嫌いではない。嫌いではないけど、
「俺様分かります、伏見サン絶対生涯独身ですよ」
「がーん…！！ そないなこと言わんといてや！ というかなんでいつも急に毒吐くん？！」
なーーーんか、辛口な言葉を浴びせたくなる気分になる。
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作者名：シロツメココロ | 作成日時：2024年3月19日 14時
