かげの制裁

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③ ページ7

「ねぇ志保、楽しかった？

姿を変えて、周りの人間を騙して、自分がした事も忘れて、普通の女の子のように過ごす時間は。
驚いたよ。志保が子どもになってる事もだけど、あんな風に笑うなんて。犯罪者のくせに」

告げられた言葉に灰原哀は息を飲んだ。こんな事を姉は言わない。

「あぁ勘違いしないでね。犯罪者は笑うなって言ってるんじゃないの。
罪も償わず、本当の事も隠して、よく笑えるなーって感心したのよ」

ソレは、姉の姿で、姉の声で話してくる。

変装だと頭で理解していても、姉の姿というだけで、灰原哀の心を抉るには十分だった。

「心の中で『何も知らないくせに』って見下して、悲劇のヒロインになった気で、優しい人達に甘え続けていたんでしょ？」

哀「……っ」

「お姉ちゃん悲しいな。志保を思って組織の要求を飲んだのに、志保が反発するなんて。お姉ちゃん死に損だよ。

……死を待つだけの人間に希望の光を与えるなんて、優しい神様も居たものね。私には居なかったのに」

ソレは冷たい声で告げた後、拳銃を構えて発砲した。
狙われたのは、足。灰原哀は驚きと痛みで顔をしかめたが、声は上げなかった。

「いつだったか、ジンに撃たれた時も声を上げなかったみたいね。偉いわ、志保。
安心して？私が撃つのはこれだけ。だから答えて、志保。

あなたに希望の光を与えたのは、誰？」

哀「……」

「だんまりかぁ。まぁそうよね」

ソレは、うんうんと頷き笑うと灰原哀の前でアルバムを開いて見せた。
写真。だが映っているものに灰原哀は目を見開いた。

同級生の吉田歩美、円谷光彦、小嶋元太、江戸川コナン

預かってくれている、阿笠博士

彼らの写真は、どれも目線が合っていなかった。盗撮だ。

灰原哀は、ソレに目を向けた。ニコニコと笑っていて「沢山のお友達が居るのね」と言った。

哀「……彼らを、どうするつもり……」

「それはあなたがよく分かっているでしょ？シェリー」

哀「！！」

その途端、ソレの雰囲気は変わった。
灰原哀の表情は恐怖で引き攣り、体は小刻みに震えた。