かげの制裁 (ページ20)

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② ページ20

哀「……また、あなたなの……」

「『あなた』なんて、お姉ちゃんって呼んでくれないの？」

言うと睨んできた。ジンが居た時は震えていたのに、居なくなった途端この態度。

散々ジンやウォッカに痛めつけられたのだろう。顔や手足が傷だらけだった。

「可哀想な志保……。そんなあなたに喜んでほしくて、ある話をしに来たの。

家族の話よ」

分かりやすく顔を上げた。その表情は、明るい。
食いついてくれた事に笑みを浮かべ、拘束具を外した。

宮野明美の笑みに弱いのか、それとも家族の話を聞ける事が嬉しいのか、逃げ出そうとする素振りは見られなかった。

「父親の宮野厚司は、白鳩製薬で働いていた。だけど会社は倒産し、母親の宮野エレーナと共に町医者を開業。宮野明美も幼いながらに両親の手伝いをしていた」

そんな家族の元に、ある話が舞い込んだ。宮野厚司の研究をバックアップするという話だ。
宮野厚司の研究は、町医者の片手間に出来るものでは無かった為、宮野エレーナは給料が良いなら病院を畳んで手伝うと言った。

だが宮野厚司は、この話を断ろうとしていた。宮野エレーナと離れる事を嫌がって。

「でも、考え直す事にしたの。何故だか分かる？」

目を見て聞いたが答えは聞かず「増えたからよ」と答えると、察したのか目を見開き動き始めた。すかさず腕を掴んで逃げられないようにした。

宮野エレーナの腹の中には、1つの命が宿っていた。その子どもの名前が、宮野志保。

「だけど不運な事に宮野夫妻は火災事故で焼死、宮野明美は死に損。哀れとしか言いようがないわね。

あぁ、もしかして灰原哀の[哀]って哀れって意味で付けたの？不幸を招いたのはあなたなのに？」

真実を知った者は皆このような顔をするのか。シェリーは目を見開き、信じたくない、と言うように首を横に振った。
バーボンとキールの表情も確認しておくべきだったと今になって後悔した。