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宮近side
ぶつかってAが倒れた瞬間、血相を変えて松倉が走って行った。
Aを抱き抱える松倉に俺も海人もびっくりして動けなかった。
松倉はAを怪我させてしまった事がフラッシュバックしてるみたいで「ごめん、どうしよう。」そればかりを繰り返していた。
Aが松倉を抱きしめてやっと我に返った。
胸が苦しかった。
自分の彼女が他の男に抱き抱えられて、抱きしめて…この2人の間に俺が入る余地はどこにもなくて。
その後のAの悲しそうな、でも愛しい人を見るような顔。
そんな顔のA、俺は知らない。
「ちゃか、ごめん…。」
「何で謝んだよ。俺が惨めだから?」
松倉にイライラをぶつけたってどうにもならないのに…。
「そんな事思う訳ないじゃん。」
「Aは俺の彼女だよ。」
「わかってる。…ごめん。」
何だよ。
そんな苦しそうな顔すんなよ。
俺だってAが苦しむ顔も松倉が苦しむ顔も見たくないんだから。
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松倉side
Aが怪我をしたのを見てパニックになった。
桜の下での光景がフラッシュバックしてそこからの記憶があまりない。
「海斗?私、大丈夫だよ?」
Aに抱きしめられて我に帰ると悲しそうなAの顔。
周りはびっくりしてる。
2年前の祭りの後、俺がAを怪我させた事でずっと負い目を感じてるんじゃないかと…それが辛いと言ったA。
負い目なんて感じてるつもりは無かったけど、Aが辛いのなら少し距離を置こうと思って自分の気持ちに蓋をした。
なのにAの存在が小さくなる事は無くて、どんだけ重い蓋をしたって溢れてくる。
ちゃかもAも苦しませたくないのに…。
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作者名:あや | 作成日時:2021年4月6日 22時