高3の夏 ページ47
Aside
「あっつい。」
夏の中庭掃除は地獄だ。
「ちゃんと日焼け対策しないと焼けちゃうよ？」
「海君。え？もう帰り？」
「テスト期間中。まじだるい。」
って大きなあくびをした。
「あー、そう言えばちゃかが言ってた。」
なんて話してたらちゃかと海斗もやってきて「焼けるよ？」って。
さすがアイドル。
皆お肌綺麗だもんな。
「あ、チャイム。もう戻らなきゃ。じゃあね。」
校舎に入ろうとしたら「A！」ってちゃかの声。
「夜電話していい？」
聞かなくても電話していいのに。
ちょっと離れてるから「いいよー。」って叫んで両手で大きく丸。
「あ！！A、危ない！」
「え？」
背中にドンっと衝撃を受けて倒れた。
「痛っっ。あーあ、膝擦りむいちゃった。」
って出血した膝をハンカチで押さえてたら「Aっっ！！」って血相を変えて海斗が走ってきた。
「どうしたの？大丈夫だよ？」
「血が出てるっ。早く保健室！」
「わっ、海斗！下ろして。」
海斗に抱き抱えられて周りもびっくりしてる。
「くら、どうした？」
「松倉、落ち着け。」
皆言ってるけどまるで聞こえてなくて、私を抱えたままあたふた。
「A、大丈夫か？すぐ保健室連れて行くからな。あ、病院がいいか。痛いよな。ごめんな。」
海斗…
まだ苦しんでるの？
「海斗？」
「病院、どこがいいんだろ？」
「海斗、下ろして。」
「血が止まらない。どうしよ。」
「海斗？私大丈夫だよ？」
ギュッと抱きしめるとやっと我に返ったのか「あ…ごめん。」ってゆっくり下ろしてくれた。
ぶつかった子は1年生で「ごめんなさい。」って謝って行った。
「はは…ごめん。取り乱した。」
って苦笑い。
「海斗…まだ苦しんでたんだね。」
「いや。違うって！ちょっと血を見て焦っただけだから。」
まだ顔色悪いじゃん。
「海斗、苦しめてごめん。本当にごめんなさい。」
涙が頬を伝った。
「A…。」
頬に手を添えその涙を優しく拭き取ってくれたけど…
そんな切ない目で見ないで。
抑えてた好きな気持ちが溢れてしまう。
私はゴシゴシと乱暴に涙を拭い、その場から逃げた。
どうすれば海斗の事を忘れられるの？
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作者名：あや | 作成日時：2021年4月6日 22時
