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2ヶ月くらい前、
欲しかったスニーカーを買った帰りだった
こじんまりとした花屋さんが目に入って
ヌナが好きそうだな、なんて思って近付いてみると花屋ではなくアンティークの雑貨店だった
吸い込まれるように扉を開けると暖かい木の匂いと軽やかな花の香りが混じり合いここでもまたヌナを思い浮かべてしまって
st「ゆっくりご覧くださいね」
in「あ、はい」
レジ前にいた店員さんは目尻に皺を作ってそう微笑んだ
少し感じた気恥ずかしさに目を逸らした先
灰色の五つ指がきちんと別れた手袋があった
何となくそれだけが目について他の色もあったはず、たぶん
でもよく覚えてないな
in「プレゼント用でお願いします」
st「まあ、彼女さんへのプレゼントかしら」
in「...もっと大切な人です」
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その手袋をじいっと見つめて何も話さないヌナ
失敗したかな。
ヌナは自分と同じ瞳の色が好きじゃないはず、わざわざ言われたことはないけれど
でもこれがすごく、探していたものに見えたから
「ありがとう、大切にする」
穏やかなその声に
きゅっと指先が震えた
「あったかい」
手に取った時に小さく思った手袋はヌナにはぴったりだったみたい
「イエニが選んでくれるものはいつも間違いないね」
in「そうですか?」
「うん」
in「なら、良かったです」
「あのね」
in「はい」
「これからもヌナの弟はイエニだけだよ」
マシュマロを浮かべたココアみたいな人だなあ
甘くてあったかい感情がじんわり内側から広がる
in「!」
その時ぱちっと急に暗くなる
「「「Happy BirthdayA〜!!」」」
hn「やー!誰だ押したの!」
lk「ロウソク溶けるじゃん」
hj「カメラあるからもっと前行ってー」
cb「Aに似合いそうなカチューシャ持って来た」
「毎年これですよ」
bc「Aや!早く!願い事して!」
「あ、はい」
ロウソクの火が
舞うように揺れ
暗闇に乗じて、僕も静かに目を閉じた
「ありがとうございます」
sm「何の願い事したの?」
「こういうのは人に話すものじゃないんだよ」
hn「プレゼントはまた今度渡すから」
「今日のステージが無事に終わるのが1番嬉しい」
hn「お〜Aの為に成功させるよ」
「STAYの為に頑張って」
hj「ハニより俺を応援してよ〜」
「リクス頑張って」
fx「あははっ、うん」
hj「やあー!」
ねえ、神様
ヌナのお願いの次にどうか、
僕の願いも
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作者名:ヨルム | 作成日時:2024年1月25日 13時