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狭い部屋に
立派なグランドピアノが1つ
目を閉じて腕を動かしているA
その場からは見えなかったけど状況から察するにAが弾いているんだろう
何分何十分そこにいたのか。
「リクス」
fx「もしかして気付いてた？」
「うん」
fx「ならすぐ声掛けてよ」
「上手に気配消してたから忍者かと思って」
fx「ニンジャはAでしょ」
「はは」
中に入ると驚いた様子もなく話しかけられた
「やっぱり防音壁じゃないと音漏れるみたいだね」
fx「え？」
「ピアノ、聞こえたんでしょ」
fx「うん、この部屋元々ピアノなんて置いてあった？」
「私の」
fx「.....ん？」
「実家にあったのをここに置いてもらったの」
fx「何で」
「秘密基地？」
当時は今よりもっと身長差が無くていつもなら殆ど同じ目線なのにAが座って下を向いているから長いまつ毛が際立っていて、透けそうな白い肌、薄い桜色の唇
人間離れした綺麗な顔
fx「Aは.......本当に良かったの？」
「何が？」
fx「アイドルになりたかった訳じゃないんでしょ」
「何でそう思ったの？」
fx「目立つの好きじゃないじゃん」
「まあそう言われるとそうだね」
こっちは真剣なのに
あっけらかんと。
目立つ外見に反してAはいつも息をころすように隅っこにいて、しかも秘密基地を作るくらいだしこの世界にいるには生きづらいんじゃないんだろうか
「だからこうやってバランス取ってるの」
fx「そんな生活続けられる？」
「ごめんね」
fx「Aは時々話が噛み合わなくなるよね」
「怒らないで」
fx「怒ってないよ」
「怒らせるつもりも、困らせるつもりもなかったんだけどね」
鍵盤蓋を静かに閉じてやっと向き合って見上げられる
アッシュグレーの瞳がこの日に限ってどこか寂しそうで
「リクスが心配してくれるなら」
fx「うん」
「これから私が1人になりたい時近くにいてくれない？」
fx「それは矛盾してない？」
「してないよ」
fx「Aはいいの」
「うん、リクスがいい」
静かな世界に音を立てて
後からやって来たのは果たして自分だったのかそれとも
.
「リクス？」
fx「あ、ごめん何だっけ」
「顔じっと見るから何かついてるのかと思って」
fx「ううん........何にも」
ただふらりとどこか遠くへ行ってしまいそうな君が
今日もここにいる奇跡を
大事にしたくて
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作者名：ヨルム | 作成日時：2024年1月25日 13時
