もう一つの夢物語【wr*wr*d!】 (ページ12)

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復讐と美味。ページ12

「オスマン行け！奴ら呼んでこい！」

「分かった！分かったから蹴らないで欲しいめう！」

慌てた様に緑髪の彼は去っていった。これでこの場に残ったのは二人、赤マフラーと金髪だけ。
私の人生を狂わせた第二の人間、そんなのに容赦はする筈も無い。

「皆赤に染まれば良いのに。暖かいから、寒くないから寂しくないから、だから… だから死んで貰うよクソ野郎！」

地面を蹴る音が二つ、右へ左へ飛び交うナイフを躱しながら赤の横の壁を蹴ってナイフを突き出す。これは躱されるから、その次。反対側の壁を蹴り左足を床につけて威力を弱めて右足で床を蹴る。ああ、楽しい。強敵とやり合うのは楽しい。

「ああもう、そんなに警戒して躱さないでよ！別にナイフに毒が縫ってあるわけでも無いんだしさ。ああでも、楽しいな。これこそが私達の…」

右に転がる。銃弾は私が居た位置を正確に貫いた。

「酷いな、会話くらいさせてよ。」

間髪入れずに飛んでくるナイフを自分のナイフで叩き落とす。

「全くさ」

拳銃に弾を込めるのを見て自分も拳銃を取り出す。

「…さあ、私達の戦争(クリーク)を！」

少し遅れた開戦の言葉と共に、威勢よく銃声が鳴る。狭い地下内に幾度となく反響して少し煩い。

彼らは瓦礫の後ろに隠れる。私は知っている、こういう時には爆弾を投げればいいと。手榴弾のピンを抜き、ぽいっと放り投げる。何の位で爆発するかは知らないけど、まあもうすぐだろう。
轟音と共にぱらぱらと砂塵と破片が舞う、流石に耳が痛い。煙と共に地面が揺れて、地下でやるものじゃないなと反省する。煙を切って現れる赤の剣をナイフで捌いて拳銃をその眉間に突き付ける。瞬間に後ろに数歩下がると足元に銃弾が飛んでくる。やはり面倒なコンビだ、しかし数歩下がった位じゃ引き金を引くのを止めは出来ない。銃口が少し下がってもお構い無しに引き金を引くと、小さな呻き声と共に彼のズボンに赤色が滲む。擦り傷程度だけれど、それでも嬉しい、楽しい… 楽しい？
何か変だ。
下がった瞬間にナイフを投げられれば、私は呆気なく転がったはず。なのに彼はそれをしなかった。それだけじゃない。よく考えれば、彼らは決めの一手を出さない。避けた後、宣言の後、突っ込んだ後、私の動きは翻弄するためのもので隙はいくらでもまだある。

本気を出していない？ …そんな、まさか。
そうだとしたら耐え難い侮辱じゃないか。

ナイフで捌けたのは、それも。

…ああ、要らない事に気付いた。