〇 感傷 ページ8
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Side . BC
「バンチャンにも練習があるのにごめんね。」
そう言いながら少し困った様に眉を下げたのは練習生のダンスを指導して下さって居るトレーナーさんの一人だった。当然俺も長らくお世話に成って居る。
「全然大丈夫です!寧ろ俺が役に立てるか心配です … 」
「いやいや、本当に来てくれるだけで有難いから。」
昨日レッスン終わりに急に声を掛けられて驚きはしたが話を聞くと 「言葉の問題で馴染めない練習生が居るから英語で話し掛けて貰えないか」 との事だった。
トレーナーさんの話ではシンガポールで育ったらしく韓国語はサッパリの様だ。スカウト陣が太鼓判を押す程の人材らしく人間関係の悩みで無くすには惜しい人材だと言う事で今回俺が駆り出されたらしい。
特別コミュニケーション能力に自信が有る訳では無いけれど、近い将来同じグループになるかもしれない後輩だからと気軽に引き受けてしまったけれどいざその時になると少し緊張してしまう。トレーナーさんがその子を呼び出して居てくれたらしく、案内されたのは普段余り使われて居ないボーカルルームだった。
「A、お待たせ。」
「だいじょぶ、きにしない。」
トレーナーさんが開けたボーカルルームのピアノの前に椅子を置いて腰をかけて居る人影が酷く片言な韓国語を話したのを聞いて成程、これは日常会話も難しいと見た、と心の中で呟く。
最初はトレーナーさんの事しか見ていなかったけれど此方の存在に気が付いたのかパチリとゆっくりと瞬きをしながら俺の方へと視線を移す。
証明に照らされた瞳はパッチリとした二重で綺麗にアーモンド型を象って居る、下がり気味な目尻で少し柔らかい印象を与えて居るけれど笑顔を浮かべるでも無くただジッと此方を見詰めているせいか美しさの中にほんの少し怖さを感じた。パチリともう一度瞬きをしたその姿が余りにも整って居た物だから、彼はアンドロイドや精密機械の類なのか?と疑いたくなってしまう。それ程圧倒的な美少年だった。
「あ、
「 …
見るからに年下の子に対して反射的に使った敬語に返って来たのは少し硬い、明らかに緊張した声だった。
そこからどう会話を繋げれば良いのか分からずに一瞬気まずい空気が流れた所にトレーナーさんの吹き出す様な笑い声がその嫌な空気を断ち切る。
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菜々(プロフ) - 更新楽しみにしています。続きが気になります🥹 (1月28日 8時) (レス) @page33 id: 6590863194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:眠兎 | 作成日時:2021年3月20日 16時