結婚を前提に、まずは離婚してください。【呪術廻戦】

10-演技派なんです ページ10

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五条悟


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僕が落ち込んでいることに気づいてもらえたのは嬉しいが、まさか馬鹿正直に「君が既婚者だと知って落ち込んでいました」と白状するわけにもいかず。

瞬時に頭をフル回転させる。
そして少し俯き、さも悩んでいる風に語り出す。





「……前に、妻とはうまくいってないって言ったでしょ？」

「はい」

「特に最近はお互いに仕事が忙しいこともあって、碌に顔も合わせられなくて……」





最近、というか結婚してからずっとだけど。

よくもこう舌が回るものだと、自分のことながら感心する。僕、主演男優賞受賞できるんじゃない？





「そ、うですか……。それは奥さんも悟さんも寂しいですよね……」

「うん……」





うっ。
ちょっと罪悪感。

Aは僕の話に感情移入してくれている。
こんな、嘘だらけの話に。

本当に心が綺麗な子なんだなあと思う。
僕とは違う、だからこそこんなにも眩しい。





「あの、奥さんと連絡は取ってますか？ラインとかでも……」

「いや、最近は本当に忙しくて中々……ね」





ていうか、妻の連絡先知らないし。





「じゃあ、1日1通だけでもいいので、連絡してみたらどうですか？その日にあった些細な出来事のこととか……。それだけでも奥さんは喜んでくれると思いますよ」

「……そうだね、連絡してみるよ。ありがとう、アドバイスくれて」

「いえいえ！少しでも悟さんのお役に立てたなら嬉しいです。……それにしても、悟さんは本当に奥さん想いなんですね」

「え？あ、はは、……そう見える？」

「はい」





「羨ましいくらい」と微笑んだAは、どこか遠い目をしていた。いきなり大人びた雰囲気になり、胸の奥を掴まれる。感じる、妙な違和感。





「Aは、」





______幸せなの？


そう尋ねようとした刹那、新たな客が店に入ってきた。

Aは「いらっしゃいませ！」と対応を始める。


そのまま居座るわけにもいかず、モヤモヤを抱えたまま店を後にした。






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