12-そんなことより ページ12
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五条悟
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出張に行き、お土産に甘いものでも買って帰ろうと、お土産コーナーを物色している時だった。
「それにしても、悟さんは本当に奥さん想いなんですね」
あの日、Aに言われたことを不意に思い出した。
僕は断じて奥さん想いなんかじゃない。
Aが思うような、良い夫ではない。
今までも、これからも。
でも。
…
Aには誠実でありたい、と思ったんだ。
妻との関係が良くないと相談したら、Aはラインでもいいから連絡を取ってみたらとアドバイスをくれた。だけど妻の連絡先なんか興味無かったから知らない。
知ってるのは、妻が住んでいる家だけ。
一応家は僕が用意してあげたから、場所は知っている。
Aがせっかくアドバイスをくれたんだ、これを機に一度妻のところを訪ねてみよう。喜久福を自分の分ともう一つ買い、妻の家に向かった。
妻は留守にしていた。だから合鍵を使って家に入った。空き巣をしてるみたいで気が引けたけど、一応形式では夫婦なので問題は無い。
リビングのテーブルに喜久福を置く。
そしてその辺にあった使わなそうな紙を拝借し、置き手紙を残した。突然身に覚えのない喜久福だけあっても普通に怖いだろうし。
これでよし、とペンを胸ポケットにしまう。
顔を上げた拍子に部屋の様子が目に入る。
妻はあまり物欲や趣味の無いの子なのだろうか。ここで半年以上過ごしているとは思えないくらい荷物が少なかった。
まあ、どうでもいっか。
妻のことを考え時間は一瞬で、すぐに頭の中は好きな人のことで埋まる。
これで妻から何か反応があれば、Aに報告できるし。
Aにアドバイスくれてありがとうって御礼言わなきゃなー。
なんて軽い気持ちで家を出た。
翌日、妻の家に行ってみたら、またまた彼女は不在だった。喜久福の感想聞こうと思ったんだけどなあ。用はないが、なんとなく上がってみる。
するとリビングに置き手紙が置いてあった。
それを読んでみる。
『喜久福ありがとうございました。
おいしかったです。
でも私はずんだ生クリーム味より
ほうじ茶生クリーム味の方が好きです』
「……ハハッ!」
堪えきれなかった笑い声がリビングに響く。
人があげたお土産にケチつけるなんて、中々変わった奴じゃん。
案外、妻は面白い子なのかも。
ま、そんなことよりAのとこ行こうっと。
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1 - ぱぅちさんの作品見たんですが今ハマってしまいました😁これからも他の作品を頑張ってください🙏👍 (11月4日 17時) (レス) @page37 id: 053afa639a (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 最近呪術廻戦の夢小説にハマったのですが、このお話、めっちゃ好きです!!ありがとうございました!! (6月30日 17時) (レス) @page36 id: c2b1544657 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - 良い感じにお互いがすれ違っていて凄く素敵なストーリー構成でした! 恋をした所の描写を丁寧に書く事で読む内にどんどん世界観に引き込まれていきました。とても綺麗なお話をありがとうございました! (2022年2月2日 23時) (レス) id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ふぅさん» 今作では五条さんの一生懸命な片思いを描けたかなと思います!笑 こちらこそ、最後までお読みくださりありがとうございました…!😭☺️ (2022年1月1日 16時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
ふぅ(プロフ) - 完結、お疲れ様でした。ずっと柔らかい雰囲気でとても好きなお話です。次回作も楽しみにしています! (2021年12月23日 23時) (レス) @page37 id: 56676c275e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2021年7月31日 22時