結婚を前提に、まずは離婚してください。【呪術廻戦】

22-嘘と涙と失われた恋 ページ22

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「いや、この質問は卑怯だよね。普通、僕から言うもんか」





途端に、空気が変わる。

徐にサングラスを外し、数時間振りに空よりも綺麗な青色と目が合った。彼の宝石のような瞳は、優しく細められていた。その奥には穏やかさと燃え上がるような熱が隠されている。





「Aが好き」





その告白は、魔法の呪文を唱えるみたいに聞こえた。
私にしかかからない魔法。
どうしようもないくらい胸が締め付けられて、でも泣きたくなるくらい嬉しくて。

一瞬でも夢のような感情に浸れた
この幸せすぎる瞬間を、きっと私は一生忘れない。


大好きな人に愛を囁いてもらえた、それだけで十分だ。

私と悟さんの未来に、ハッピーエンドは有り得ない。





「悟さんは、結婚してるじゃないですか」

「うん。だから君と一緒になれるなら妻とは別れる」





熱烈な瞳に射抜かれて、ほんの少しだけ心が揺れた。
そこまでして、私と一緒に居たいと思ってくれてるんだって。こんな考えになる私は最低だけど、嬉しかった。

だからこそ、頷けない。

私がもし悟さんの奥さんの立場だったら。
夫が他の女性を口説いていたら、他の女性と生涯を添い遂げようとしていたら。

心に、深い傷を負う。

私のせいで悟さんの奥さんが傷つくのは駄目だ。


俯いて、静かに首を横に振る。





「ダメですよ、そんなの。私も夫がいますし。悟さんは奥さんを幸せにしてあげてください」





私はもう別れることが決まっているけど、悟さんはそうじゃない。

今、今がラストチャンスだ。
今引き返せば、悟さんは大丈夫。





「、……でも、心に嘘はつけない。僕が愛してるのは君だ、この気持ちのまま妻といることはできない」

「大丈夫、今離れればまだ間に合いますよ。きっと一時の感情。すぐに冷めます」

「嫌だ、Aはもう会ってくれないの？僕はAだけが欲しいのに、Aがいないと幸せになれないのに」

「一緒にいない方が、きっと幸せになれますよ。お互いに」





悟さんの綺麗な顔が悲痛に歪む。
そんな顔をしてほしくない、でもここで揺らいではいけない。私達は正しい道に戻っていく。





「僕といない方が、葵は幸せなの？」





そんなわけない。
悟さんと過ごす時間が、愛おしかった。

泣きそうになるのを堪えて、無理矢理笑顔をつくる。





「幸せですよ」





涙は出てないのに、
悟さんが泣いてるような錯覚がした。






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