041-バラティエにて ページ42
.
「ここだよ」
サンジの目線の先を辿れば、「バラティエ」という看板があった。
まだ比較的新しそうなレストランだ。
こっちこっち、と裏口へと私を先導する。
秘密基地に入るみたいでちょっとわくわくしてる自分がいた。
サンジに連れてこられたのはレストランにしてはちいさなキッチンだった。
彼曰く、このキッチンは住み込みで働いてる従業員やオーナーが普段使っているらしい。
「今ならこのキッチン空いてるから。ちゃちゃっと作っちゃおう」
「……うん！」
サンジに教えてもらって、まずは人参のスープを作った。
包丁の持ち方や野菜の切り方、そんなことを丁寧に教えてもらって。
でもやっぱり火を目の前にすると僅かに緊張が走り、サンジに「大丈夫？」と心配されながらもなんとかやり遂げた。
いつかコラさんにも食べてもらうんだと思えばなんとか頑張れたのだった。
スープを作るだけで体力を消耗した私に「ほら、少し食べてごらん」とスープを注いだ小皿を渡してきた。
それを受け取り、口に含む。
「美味しい……」
「だろ？自分で作ると美味しく感じるんだよ」
…
サンジはそう言ってくれたけど、その通りなのかもしれないけど、
きっと、スープが美味しいのはサンジが教えてくれたからだ。
サンジはこの歳でもう立派な料理人。
そして次に簡単なピラフを作ることになった。
相変わらず教え方が上手なサンジのおかげで食材を切ったりする工程までは上手くいく。
そして切った食材を炒めることになった時。
「……Aちゃん、ちょっと見てて」
「エッ」
フライパンで炒めるのはサンジがやってくれると。
スープはかなり美味しかったし、
きっとこのピラフも美味しくできるに違いない。
サンジの料理は魔法みたいだ。
食べる人を笑顔にしていく。
そう思っていると。
「(……あれ？)」
サンジが火をつけた瞬間、
鮮やかな赤が揺れた瞬間、
……私は恐怖を感じなかった。
むしろサンジがこれからどんな魔法をかけてくれるのか楽しみで。
その火が綺麗とさえ、思った。
そんな自分に驚いた。
あっという間にピラフを作り終えて、お皿に盛り付ける。
「火が怖くちゃ料理はできねーぞ？」
なんて笑ってからかってくる彼に、「もう怖くないよ」と落ち着いて答えられらほど余裕はあった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 190人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アマシギ - 素敵すぎる…！！どの作品もとても優しさあふれるお話ですね…。応援してます！！ (2022年9月23日 22時) (
レス) @page44 id: 4cd718819a (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 最っっ高です、、、素敵な作品に出会えました。本当にありがとうございます。これからも頑張ってください。応援してます！ (2022年7月20日 20時) (レス) @page44 id: 70b28d3e93 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 泣いた…。めっちゃ素敵なお話でした…。ありがとうございました…！ (2021年6月25日 19時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ゆゆさん» わわわ、ありがとうございます…！完結してしばらく経ってもコメントを頂けて嬉しいです（ ; ; ）この小説では如何にしてコラさんと夢主の距離(家族としての)を縮めていくかめちゃくちゃ試行錯誤して考えたので、そう言ってもらえて嬉しいです…！ありがとうございます (2020年8月6日 17時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初めまして！とんでとない素敵な作品に巡り会えました・・・読み終えた後、心がめちゃくちゃぽかぽかしました、最高です......(TT)特に作文のシーンなんかは感動しすぎて泣いてしまいました（笑）ぱぅちさんの小説、とても大好きです。これからも応援しております、、！ (2020年7月8日 0時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年7月10日 20時
