037-プロポーズ(?) ページ38
.
「いるわけねーだろ」
否定しようと口を開きかければ、おれより早くローがそう答えた。
「万年フリーのコラさんに」
助手席から嘲笑ったローが振り返る。
ぴくぴくと表情筋が動く。口は半開きなまま。
……いないことは合っているのだが。
言い方と、その歪んだ笑顔が気に食わん。
と、まあここで大声で文句を言ってもどんどん自分が無様になっていくだけ。
ここはあくまで冷静に。挑発にはのらねー。
「……おい、ロー?確かにおれは“今”はフリーだが、万年ってわけじゃねェ」
さりげなく“今”はということを強調する。
「コラさん、Aと出会った後はずーっと彼女いないよね」
天使が悪魔になった瞬間だった。
Aの一言がおれの胸に突き刺さる。
それを聞いてローが「ほぼ万年じゃねェか」なんて言い出してダメージは2倍。
だって仕事で忙しかったし、
Aやローがいれば十分だったし、
……いや、止めよう。
次々と浮かんでくる言い訳を消去する。
言い訳したところで惨めになるだけだ。
すっかり落ち込んで黙っていると、「まあお前ら、ロシーをあんまりからかってやるな」とドフィが笑い混じりに言う。
救世主降臨かと思いかけたが、そういえば元凶はこいつだった、この野郎。
「……実は、父上がおれ達のことを心配しててな」
「父上が心配?なんの?」
「おれ達が2人とも、独身だからって」
…
は?
おれはもちろん、ローとAも呆気にとられる。
「……え?ドフィはともかく、おれはまだ結婚って歳じゃなくね?」
「だが彼女もいないんだろ」
「…」
「終いにゃ見合いでもさせるかってさ」
「……冗談だろ?」
「さあな。だが、あの過保護親父のことだ。一体どこまで本気なのか……」
頭が重くなる展開に、ただ苦笑いすることしかできなかった。
嘘だろ?見合いなんて、いつの時代の話だよ。
……冗談だと笑い飛ばせないのは、ドフィの言う通り、父上がいわゆる過保護だからだ。
はあぁっと尾の引いた溜息を吐くと、Aが「ねーえ」と顔を覗き込んできた。
「コラさん、結婚するの?」
純粋な興味で見上げてくる瞳。
眉を下げて笑い、「しねーよ」とAの頬に手を添える。
「お前がいりゃそれでいい」
後にローとドフィの間で「ロシーのロリコン疑惑」が囁かれたという。
.
190人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アマシギ - 素敵すぎる…!!どの作品もとても優しさあふれるお話ですね…。応援してます!! (2022年9月23日 22時) (レス) @page44 id: 4cd718819a (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 最っっ高です、、、素敵な作品に出会えました。本当にありがとうございます。これからも頑張ってください。応援してます! (2022年7月20日 20時) (レス) @page44 id: 70b28d3e93 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 泣いた…。めっちゃ素敵なお話でした…。ありがとうございました…! (2021年6月25日 19時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ゆゆさん» わわわ、ありがとうございます…!完結してしばらく経ってもコメントを頂けて嬉しいです( ; ; )この小説では如何にしてコラさんと夢主の距離(家族としての)を縮めていくかめちゃくちゃ試行錯誤して考えたので、そう言ってもらえて嬉しいです…!ありがとうございます (2020年8月6日 17時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初めまして!とんでとない素敵な作品に巡り会えました・・・読み終えた後、心がめちゃくちゃぽかぽかしました、最高です......(TT)特に作文のシーンなんかは感動しすぎて泣いてしまいました(笑)ぱぅちさんの小説、とても大好きです。これからも応援しております、、! (2020年7月8日 0時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぱぅち | 作成日時:2019年7月10日 20時