033-忘れ物 ページ34
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この場から消えたくなるくらい、追い込まれていた時。
教室の扉が勢いよく開いた。
私はもちろん、先生含むクラスの皆の視線がそっちの方へと移る。
「あッ……えっと、いきなりすみません」
コラさん？なんでここに……
驚き過ぎて声も出ず、ただ見つめ返すばかり。
「すぐ帰るんで」コラさんは先生に軽く頭を下げ、私の席へと向かってくる。
転校してきた時にコラさんと挨拶に来たので、一応先生とは面識がある状態。
先生は「あの、えっと…」と戸惑っている。
「誰？あの人」
「Aちゃんのお父さん……いや、お兄さんかな？」
「アイツ、家族いないんじゃ……」
クラスメイトがヒソヒソ話しているのも気にならなかった。
コラさんはニッと笑って言った。
「宿題、家に忘れてたぞ」
「エッ」
「今回だけだからな、届けにくんの」
渡されたのは半分に折った作文用紙だった。
……どうして。この作文、書き終わってないのに。
「でもこれ…」それを伝えようとするも、頭を撫でられて言葉は遮られた。
そしてお礼も伝えられないまま「失礼しました」と立ち去ってしまう。
異様だった光景に静まり返る教室。
「じゃ、じゃあ届けてくれたみたいだから、発表してみようか」
「あ、でも…」
先生にそう言われ、慌てて作文用紙を開く。
そして目を見張った。
じんわりと目に涙が浮かんでいく。
ああ、どうして。
震える声で文章を読み上げる。
「私のお母さんは塩と砂糖をまちがえちゃうようなうっかりさんでした。でも一人で私を育ててくれた、優しくて強い立派なお母さんでした。私はお母さんのことが大好きです。
______コラさんは、」
私が書いたのは、ここまでだったのに。
「こ、コラさん、は……かっこよくて、面白くて、料理が上手で、とても素敵な人です」
コラさん、……コラさん。
涙が溢れて止まらなかった。
「わ、たし…のことが大好きで、……私と暮らせて、幸せだと思ってくれてる、みたいですッ……私もコラさんが大好きです」
雑な殴り書きでこう続きが書かれていた。
誰が、なんて聞くまでもない。
折角の休日を削ってまで、これを書いてくれたんだ。
作文用紙に雫がポタポタ落ちて、字が滲んでしまう。
作文を読み終えると、先生も涙目になりながら抱き締めてくれた。
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アマシギ - 素敵すぎる…！！どの作品もとても優しさあふれるお話ですね…。応援してます！！ (2022年9月23日 22時) (
レス) @page44 id: 4cd718819a (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 最っっ高です、、、素敵な作品に出会えました。本当にありがとうございます。これからも頑張ってください。応援してます！ (2022年7月20日 20時) (レス) @page44 id: 70b28d3e93 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 泣いた…。めっちゃ素敵なお話でした…。ありがとうございました…！ (2021年6月25日 19時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ゆゆさん» わわわ、ありがとうございます…！完結してしばらく経ってもコメントを頂けて嬉しいです（ ; ; ）この小説では如何にしてコラさんと夢主の距離(家族としての)を縮めていくかめちゃくちゃ試行錯誤して考えたので、そう言ってもらえて嬉しいです…！ありがとうございます (2020年8月6日 17時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初めまして！とんでとない素敵な作品に巡り会えました・・・読み終えた後、心がめちゃくちゃぽかぽかしました、最高です......(TT)特に作文のシーンなんかは感動しすぎて泣いてしまいました（笑）ぱぅちさんの小説、とても大好きです。これからも応援しております、、！ (2020年7月8日 0時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年7月10日 20時
