031-家族になるまで(3) ページ32
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無理に笑って欲しくなかった。
もう、こんな切ない涙を見たくなかった。
なら、……それなら、おれが、
「おれがなるよ、Aの家族に」
決意はもう固まっていた。
Aは涙の溜まった目を見開き、「え」と小さく声を絞り出した。
驚きのあまり、頬を伝っていた雫が止まっている。
もう手遅れなんだ、
この子が悲しんでいるのを見過ごせないほど関わってしまった。
「……ほん、と？」
「ああ。2人で一緒に暮らそう。きっと楽しいぞ」
勢いよく抱きついてきたAを難なく支える。
「うん、……うんッ」耳元から聞こえたのは相変わらず涙声だったけど、それにもう悲しみは含んでいなかった。嬉しそうな声だった。
彼女の背中に回した手をゆっくりとさする。
おれがAの笑顔を守るんだ。
Aを施設から引き取ったのはそれから数ヶ月後のことだった。
「……なんか、変な感じ」
「ん？」
「お兄さんはよくAを施設に送ってくれたけど、Aがお兄さんの家に行くのは初めてだから」
「そうだな。それに、もうおれだけの家じゃないさ。ここはおれとAが住む家だ」
「……うん、そーだね」
Aは照れたように「へへっ」と控えめに笑う。
そうは言いつつやっぱり落ち着かないのか、リビングのソファに座ってる間、ずっと辺りを見渡していた。
「意外と部屋綺麗なんだね」
「意外とってなんだ意外とは余計だ」
……よかった、昨日ローに家の大掃除手伝ってもらっといて。
おれ一人じゃ終わらなかったからなあ、とこっそり胸を撫で下ろす。
時計を見れば、時刻はもう六時を過ぎていた。
そういや暗くなってきたか。部屋の電気をつける。
「よし、晩飯作るか。ちょっと待ってろよA」
「手伝うよ」
「いいっていいって！おれが腕によりをかけて作ってやる。今日はAの歓迎会だからな」
「……お兄さん料理できるの？」
「ナメんなおれが何年一人暮らししてると思ってる」
「一緒に暮らす彼女もいなかったんだね」
「……さーてと、まずは野菜炒めかなー」
わざとらしく話を逸らしたおれに、Aはくすくす笑う。
そう、その調子だ。
もっと、もっと笑って。
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アマシギ - 素敵すぎる…！！どの作品もとても優しさあふれるお話ですね…。応援してます！！ (2022年9月23日 22時) (
レス) @page44 id: 4cd718819a (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 最っっ高です、、、素敵な作品に出会えました。本当にありがとうございます。これからも頑張ってください。応援してます！ (2022年7月20日 20時) (レス) @page44 id: 70b28d3e93 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 泣いた…。めっちゃ素敵なお話でした…。ありがとうございました…！ (2021年6月25日 19時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ゆゆさん» わわわ、ありがとうございます…！完結してしばらく経ってもコメントを頂けて嬉しいです（ ; ; ）この小説では如何にしてコラさんと夢主の距離(家族としての)を縮めていくかめちゃくちゃ試行錯誤して考えたので、そう言ってもらえて嬉しいです…！ありがとうございます (2020年8月6日 17時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初めまして！とんでとない素敵な作品に巡り会えました・・・読み終えた後、心がめちゃくちゃぽかぽかしました、最高です......(TT)特に作文のシーンなんかは感動しすぎて泣いてしまいました（笑）ぱぅちさんの小説、とても大好きです。これからも応援しております、、！ (2020年7月8日 0時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年7月10日 20時
