003-魔法をかけてみる ページ4
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「ママはね、魔法使いだったの」
ちゃんと傘を拾い、手を繋いで歩き出したところでAは語り始めた。
「ママが『今日は雨が降ってくるから』って傘を持たせてくれた日はね、必ず雨が降った。だからA、ママがいた時は雨でびしょびしょになったことなんてなかったんだよ」
それは、我が子を思う母の愛。
それをAは魔法といった。
魔法という名をつけて、さも自分が魔法をかけられたかのように。もう魔法がとっくに解けてしまっていることに気づかないふりをして。
「A、これからお前の傘買いに行くぞ」
魔法が解けてしまったなら、解けてほしくないなら、
今度はおれが新しい魔法をかけてやろう。
お前の母親には敵わないだろうけど。
Aは少し考え込んで、首を横に振った。
拒否のサイン。ノーの合図。
そしてすぐに笑顔になると、
「…この傘が欲しい！」
おれに初めてのワガママを。
そう言ってくれたのは嬉しいが、……
この傘は一昨年買ったもので、お世辞にも言い状態であるとは言えない。
黒の無地だし、小学生の女の子はもっと明るい色のキャラクターものとかの方がいいんじゃねーか？
そう思って確認してみるがAは「これがいい」の一点張りだった。
参ったなあ…
自然と口角が上がるのがわかった。
「ワガママな奴だな、Aは」
「…へへっ」
「わかった。Aにやるよ、これ」
こんな使い古した傘を貰ったくらいで「やったあ！」と万歳して喜ぶAがたまらなく愛しかった。
そうだ、この笑顔だ。
この笑顔が見たくて、笑わせたくて。
「お兄さん、Aね、朝はご飯じゃなくてパンがいい」
「ああ、じゃあ明日からそうしよう」
「ジャムをたっぷりつけて食べたいの！」
「うん」
「それとね、お兄さんには熱いお茶飲まないでほしい。掃除が大変だから」
「…ご、ごめんな」
Aの手を握る力が強まるにつれ、
比例して彼女の表情も明るくなっていく。
Aの我儘の一つ一つに頷いてやっているうちに、
二人で暮らす家が ようやく見えてきた。
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アマシギ - 素敵すぎる…！！どの作品もとても優しさあふれるお話ですね…。応援してます！！ (2022年9月23日 22時) (
レス) @page44 id: 4cd718819a (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 最っっ高です、、、素敵な作品に出会えました。本当にありがとうございます。これからも頑張ってください。応援してます！ (2022年7月20日 20時) (レス) @page44 id: 70b28d3e93 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 泣いた…。めっちゃ素敵なお話でした…。ありがとうございました…！ (2021年6月25日 19時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ゆゆさん» わわわ、ありがとうございます…！完結してしばらく経ってもコメントを頂けて嬉しいです（ ; ; ）この小説では如何にしてコラさんと夢主の距離(家族としての)を縮めていくかめちゃくちゃ試行錯誤して考えたので、そう言ってもらえて嬉しいです…！ありがとうございます (2020年8月6日 17時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初めまして！とんでとない素敵な作品に巡り会えました・・・読み終えた後、心がめちゃくちゃぽかぽかしました、最高です......(TT)特に作文のシーンなんかは感動しすぎて泣いてしまいました（笑）ぱぅちさんの小説、とても大好きです。これからも応援しております、、！ (2020年7月8日 0時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年7月10日 20時
