028-見ないで ページ29
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コラさんは結局、三分どころか私が家を出る時間になっても起きて来なくて。
……まあ、昨日の仕事で相当疲れたんだろう。
いつもより早く出勤したのに、いつもより遅く帰って来たから。
ランドセルを背負い、そーっと扉を開ける。
「いってきます」誰に聞かせるわけでもない挨拶を静かに呟いた。
宿題の作文用紙を家に忘れたことに気づいたのは、3時間目の授業が始まってからだった。
先生の「皆さん、作文はちゃんと書いてきましたか？」という言葉でようやく思い出した。
「では、3時間目と4時間目の時間を使って、みんなに発表してもらいます」
えー、と昨日のようにブーイングが起こる。
先生は想定済みだったのか、慣れたように手を叩いて「じゃあ、廊下側の席の子から発表しましょうね」と促す。
みんなはブーイングしながらも、机の上にちゃんと作文用紙を出していて。
先生は綺麗なままの私の机を一瞬見るが、納得したように微笑を浮かべた。
そして何もなかったかのように「はい、じゃあその場で立って発表してね」と廊下側の一番前の席の子に言った。
発表が始まっても、私は上の空で、みんなの作文の内容なんか耳に入ってこなかった。
……まあ、いっか、どうせ書き終わってなかったし。
作文用紙がここにあってもなくても同じだ。
ただ、一つ引っかかったのは。
先生は宿題をしてこなかった私を咎めなかった。
まるで私が作文を書いてこないのが当たり前とでも言うように。
胸の中に鉛が沈んでいくみたい。
決して溶けないそれは、重い。
休憩を挟んで4時間目に突入し、ついに私の番が回ってきた____が。
「えっと、Aちゃんは宿題を忘れちゃったみたいだから、次の…」
「えぇっ！？なんで、ズルくね？ならおれも忘れてくればよかったー」
「忘れれば発表せずにすんだのか！」
先生が私を飛ばして次に行こうとしたら、男子達の不満気な声が上がった。
「やめてやれよ！こいつ、家族いねーから書けないんだよ」
「ああ、そっか」
俯き、膝の上で拳を握る。
それは今、一番欲しくない言葉だった。
先生の「やめなさい！」という怒号も、ふわふわと宙に舞うだけ。
直接言ってくる人だけじゃない。
背中に無言で「可哀想」という視線が突き刺さる。
…………痛、い。
私を見ないでほしい。ほっといて欲しい。
そう思った瞬間、教室の扉が開いて、
皆の視線が一気に扉の方に移った。
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アマシギ - 素敵すぎる…！！どの作品もとても優しさあふれるお話ですね…。応援してます！！ (2022年9月23日 22時) (
レス) @page44 id: 4cd718819a (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 最っっ高です、、、素敵な作品に出会えました。本当にありがとうございます。これからも頑張ってください。応援してます！ (2022年7月20日 20時) (レス) @page44 id: 70b28d3e93 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 泣いた…。めっちゃ素敵なお話でした…。ありがとうございました…！ (2021年6月25日 19時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ゆゆさん» わわわ、ありがとうございます…！完結してしばらく経ってもコメントを頂けて嬉しいです（ ; ; ）この小説では如何にしてコラさんと夢主の距離(家族としての)を縮めていくかめちゃくちゃ試行錯誤して考えたので、そう言ってもらえて嬉しいです…！ありがとうございます (2020年8月6日 17時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初めまして！とんでとない素敵な作品に巡り会えました・・・読み終えた後、心がめちゃくちゃぽかぽかしました、最高です......(TT)特に作文のシーンなんかは感動しすぎて泣いてしまいました（笑）ぱぅちさんの小説、とても大好きです。これからも応援しております、、！ (2020年7月8日 0時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年7月10日 20時
