014-ほっとけなかった ページ15
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今日は友達とコンビニに寄ったから、いつもと違い家まで軽く遠回りになった。
友達と別れ、一人で歩く帰り道。
そういやここ、Aの学校の近くだっけか。
なんとなく気になって、学校の方を見る。
すると、
「お前家族いないんだろお!」
「ひとりぼっち女!」
「お母さんとお父さんいないとか考えらんねえ〜」
心無い言葉を浴びて、俯くAの姿が目に入った。
三人のクソガキに囲まれ、唇を噛む姿はとても悲しげなものだった。
アイツ、あんなに小さかったか?背負っているランドセルがひどく重そうに見える。
おれが知ってるAの面影もなかった。
あそこにいるのは誰だ?
あんな、呼吸のしづらそうな顔をして、クソガキ共の戯言に言い返せないでいる。
目線は地面に落ちたまま。
Aじゃ、ない。
震えるほど拳を強く強く握った。
爪が手のひらに食い込む感覚がしたが、気にも留めなかった。
おれの知ってるAは、
いつも笑顔で、
人懐っこくて、
しっかり者で、
……それで、
「Aね、コラさん大好き!ローも好きだよ!」
コラさんとおれが好きで。
思わず足がそっちの方に向かいそうになる。
が、校門から出てきた女子がAを庇うように立ったので、もう少し様子を伺うことにする。
「コラ!男子!先生に言うよっ」
「げっ」
「やめてあげなよ!Aちゃんは可哀想な子なんだから」
…
言いようのない、虚空感。
無限に広がる砂漠の中でやっとの思いで見つけたオアシスが、実は干からびていたような。
そこに辿り着いて初めて自分の居場所はないのだと自覚する。
かわいそう
そう思われること自体が、余計な世話なんだ。
クソガキ共が逃げていって、少女が「大丈夫?」と尋ねても顔を上げないA。
大丈夫なわけない。
「A」
大丈夫なわけ、ない。
「!ロー、」
「帰るぞ」
「Aちゃんの知り合い?」と困惑している少女を置いて、Aの手を取ってどんどん進む。
Aは残酷な冷水を浴びて心は冷え切ってるはずなのに、
その手は低体温なおれには沁みるほどあたたかった。
皮肉なことに、そのあたたかさが心地良かった。
そうか、これがAが自分の話をしない理由。
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アマシギ - 素敵すぎる…!!どの作品もとても優しさあふれるお話ですね…。応援してます!! (2022年9月23日 22時) (レス) @page44 id: 4cd718819a (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 最っっ高です、、、素敵な作品に出会えました。本当にありがとうございます。これからも頑張ってください。応援してます! (2022年7月20日 20時) (レス) @page44 id: 70b28d3e93 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 泣いた…。めっちゃ素敵なお話でした…。ありがとうございました…! (2021年6月25日 19時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ゆゆさん» わわわ、ありがとうございます…!完結してしばらく経ってもコメントを頂けて嬉しいです( ; ; )この小説では如何にしてコラさんと夢主の距離(家族としての)を縮めていくかめちゃくちゃ試行錯誤して考えたので、そう言ってもらえて嬉しいです…!ありがとうございます (2020年8月6日 17時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初めまして!とんでとない素敵な作品に巡り会えました・・・読み終えた後、心がめちゃくちゃぽかぽかしました、最高です......(TT)特に作文のシーンなんかは感動しすぎて泣いてしまいました(笑)ぱぅちさんの小説、とても大好きです。これからも応援しております、、! (2020年7月8日 0時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2019年7月10日 20時