32-忘れられても ページ33
.
五条先生は寝起きで状況が把握できず、泣き始めた私に困惑していた。そして、先生なりに私を励まそうとしてくれたのか、頭を撫でてくれた。私の大好きな大きな手に触れられると安心できた。
「……落ち着いた？」
「はい、……スミマセン」
そそくさと立ち上がり、
ソファに座ったままの先生に頭を下げる。
そのまま、制服のスカートの裾を握る。
流れ込んできた記憶は幸せなものもあれば、辛いものもあった。
先生を好きでいるのは楽しかったけど、同時に苦しかった。
そんな矛盾した感情を抱いたが、最後に感じたのは愛おしさだった。
五条先生と過ごした日々は楽しくて、幸せで、苦しくて、辛くて____そして愛おしい。
愛おしい、宝物のような日々だった。
「私、五条先生が好きです。先生の迷惑になるなら諦めようと思っていたけど、やっぱり好きでいたい。先生、好きでいてもいい……？」
スカートの裾を握る手が緊張で震えた。その手を五条先生が握ってくれた。思わず顔を上げれば、先生の口元が弧を描いているのが確認できた。
「好きでいてくれなきゃ困る」
「…え、」
それは、忘れなくていいってこと？
そう考えている私の思考を読み取ったのか、先生が力強く言う。
「忘れちゃ、だめ」
引っ込んだはずの涙がまた現れてくる。
「好き、好きだよA。お願いだから、忘れないで」
今度は頭を撫でるのではなく、抱き締めてくれた。きつくきつく抱き締められて、腕の力の強さから想いの強さが伝わってくる。
先生の背中に、手を回す。
心の底から忘れたくない、と初めて願った。
「先生、」
「ん？」
「私ね、先生のこと諦めなきゃいけないって思ってた。忘れたいくらい好きだった」
「…」
「でも、今は忘れなくてよかったって思う」
「大丈夫、忘れてもまた惚れさせるから」
「ふは、先生余裕じゃん」
「んなわけないでしょ」
「え、どっち」
「A。僕はね、忘れられても好きだったよ」
「……うん、ありがとう」
忘れたいくらい好きだった
____fin.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 920人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱぅち(プロフ) - レモン茶さん» こちらこそいつもあたたかいコメントありがとうございました！😭 レモン茶さんからコメント頂ける度に嬉しかったです！！これからも頑張ります！！💪 (2021年10月25日 22時) (
レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
レモン茶(プロフ) - 完結おめでとうございます！最後まで本当に素敵なお話でした！また次回作があればまた読みたいです！ぱうちさん本当にお疲れ様でした！ (2021年10月21日 20時) (レス) @page34 id: 7311114e12 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - さざんかさん» 最後までお読みくださりありがとうございました！😭 こちらこそ素敵なコメント頂けて本当に嬉しいです！私にとっても忘れられないお話しになりました✨ (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ナハマヤラさん» 最後までお読みくださりありがとうございました！😭更新が遅すぎた中でも最後までお付き合い頂いた読者様には本当に感謝でいっぱいです…！これからも頑張ります！💪 (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 白米さん» 白米さん！こちらこそ最後までお読みくださり、本当にありがとうございました！！😭 甘くない話を書いていると、読者様に楽しんでもらえてるかな…と不安になるのですが、そんな中でも白米さんにあたたかいコメントを頂けて安心してました笑ありがとうございました！ (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぅち
| 作成日時：2021年5月30日 21時
