30-不毛な恋なのか ページ31
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五条悟
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忘れてしまったのなら、また惚れさせればいいと、そう思っていた。
一度は決めた覚悟をこんなにも簡単に揺らがせてしまうのは、君が初めてだった。
A。
覚悟はしていた、なのに、それを上回る地獄が待ち受けていた。
「はじめまして!高専2年生のAです。よろしくお願いします」
「好きです!お菓子の中で1番好き」
「動物園大好きですよ!中学生以来行ってないですけど」
Aと僕の記憶は噛み合わない。
確かに存在した愛おしい思い出達は、Aの中から綺麗さっぱり消え失せている。
Aが僕を好きになってくれたキッカケさえ、もはや幻となっている。
こうなるって分かってはいたけど、やはり受け入れ難くて。
認めるのが嫌で。
Aを好きでいることに意味はあるのか。
不毛な恋なのではないか。
若人は若人同士で青春を育むべきだ。
そんな諦めに似た気持ちも湧いた。
でもこれは結局、言い訳に過ぎなかった。
逃げ道を探していただけだった。
Aを想い続けることに意味なんていらない。
ただ、好きだから。
好きだから、好きになってほしい。
それだけのことだった。
単純なことだった。
Aとこれまでの思い出の共有ができなくたって構わない。これからどんどん新しい思い出をつくっていけばいいのだから。
仮眠を取っていた。
硝子が留守中の高専の医務室で。
いつも硝子が使っている椅子に座り、アイマスクの下で目を瞑る。
少しだけ睡眠を取りたい気分だった。
すぐに睡魔が襲ってきて、夢と現実の境界が曖昧になってきた。
「先生?寝てる……?」
声だけで誰なのかすぐに分かる。
これは、夢?
夢、だよな。僕寝てるし。
夢ならいいか。
夢の中でくらい許してくれよ。
君に触れたくて仕方ないんだ、こっちは。
「A……」
「え、……わ!」
腕を引っ張って体勢を崩し、その小さな体を優しく抱き締めた。
ふわ、と感じたのは甘くて穏やかな君の匂い。
こんなにも近くにいるのに、心が手に入らない。
A、お願いだから、
早く僕に惚れてよ……。
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ぱぅち(プロフ) - レモン茶さん» こちらこそいつもあたたかいコメントありがとうございました!😭 レモン茶さんからコメント頂ける度に嬉しかったです!!これからも頑張ります!!💪 (2021年10月25日 22時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
レモン茶(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後まで本当に素敵なお話でした!また次回作があればまた読みたいです!ぱうちさん本当にお疲れ様でした! (2021年10月21日 20時) (レス) @page34 id: 7311114e12 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - さざんかさん» 最後までお読みくださりありがとうございました!😭 こちらこそ素敵なコメント頂けて本当に嬉しいです!私にとっても忘れられないお話しになりました✨ (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ナハマヤラさん» 最後までお読みくださりありがとうございました!😭更新が遅すぎた中でも最後までお付き合い頂いた読者様には本当に感謝でいっぱいです…!これからも頑張ります!💪 (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 白米さん» 白米さん!こちらこそ最後までお読みくださり、本当にありがとうございました!!😭 甘くない話を書いていると、読者様に楽しんでもらえてるかな…と不安になるのですが、そんな中でも白米さんにあたたかいコメントを頂けて安心してました笑ありがとうございました! (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2021年5月30日 21時