29-失われたデート ページ30
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五条先生は、誰を見てるんだろう。
私を通じて他の誰かを見ているような、そんな感じがした。
知りたい、と言えるほど気軽な関係ではないけれど、ただ____気になる。
先生の心を占領してしまう程の相手が。
「A、アポロいる?」
「いる!ありがとうございますー!」
五条先生と廊下で遭遇すると、またもやアポロを貰えた。もはや恒例行事になりつつある。一粒貰って美味しさを噛み締めていると、先生の大きな手が私の頭を優しく撫でた。
「ほんとにアポロ好きだよね」
「好きです!お菓子の中で1番好き」
「うん、知ってる」
知ってる……?
私は言った覚えないけど。
一瞬首を傾げるが、まあ真希か誰かが話したのかなと結論づける。きっとそうだろう。真希とかなら私の1番好きなお菓子知ってるし。
頭を撫でてくれる手が心地良くて、猫みたいに目を細めれば、五条先生が息を呑む気配がした。そうしてそのまま離れていってしまった手に、やけに名残惜しさを感じた。
「……Aってさ、」
「はい」
急に雰囲気が変わり、静かな声で切り出した。
「動物園、好き?」
「……へ?」
神妙な顔で切り出してくるものだから、何を言い出してくるのかと思えば。先生の口から出てきたのは突拍子のない一言だった。
なんで、いきなり動物園?
……ハッ!もしかして、今度動物園で任務があるとか?それで動物が苦手かどうかの確認をしてるとか。
うん、ありそう。心の中で頷く。
例え任務だとしても動物園に行けるならラッキーだ。
「動物園大好きですよ!中学生以来行ってないですけど」
「…」
「動物園で任務ですか?」と尋ねたが、五条先生は首を横に振った。
そして、いつもの__どこか寂しそうな笑みを浮かべた。
儚くて綺麗な笑みに目を奪われる。
「なんでもないよ。じゃ、僕行くから」
遠のいていく背中に、何も言うことができなかった。
私には、五条先生がよく分からない。
アポロをくれる意味も、
寂しげな表情を浮かべる意味も、
私を通じて誰を見ているのかも、
____全部、分からない。
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ぱぅち(プロフ) - レモン茶さん» こちらこそいつもあたたかいコメントありがとうございました!😭 レモン茶さんからコメント頂ける度に嬉しかったです!!これからも頑張ります!!💪 (2021年10月25日 22時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
レモン茶(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後まで本当に素敵なお話でした!また次回作があればまた読みたいです!ぱうちさん本当にお疲れ様でした! (2021年10月21日 20時) (レス) @page34 id: 7311114e12 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - さざんかさん» 最後までお読みくださりありがとうございました!😭 こちらこそ素敵なコメント頂けて本当に嬉しいです!私にとっても忘れられないお話しになりました✨ (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ナハマヤラさん» 最後までお読みくださりありがとうございました!😭更新が遅すぎた中でも最後までお付き合い頂いた読者様には本当に感謝でいっぱいです…!これからも頑張ります!💪 (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 白米さん» 白米さん!こちらこそ最後までお読みくださり、本当にありがとうございました!!😭 甘くない話を書いていると、読者様に楽しんでもらえてるかな…と不安になるのですが、そんな中でも白米さんにあたたかいコメントを頂けて安心してました笑ありがとうございました! (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2021年5月30日 21時