22-先生 ページ23
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デート、だなんて言われた時は相変わらず冗談ばかり言うなあなんて呆れてしまった。しかし、動物園に連れて来てもらってからはテンションが上がりっぱなしだった。
何を隠そう、私は動物が好きなのだ。だから動物園にいる間は始終笑顔でいられた。
「せんせ!見て、あのカンガ____」
五条先生の方を振り返ってカンガルー、と言いかけた時だった。
カシャッと機械音が響いた。
思わず「へ?」とポカンと口を開ける。
「Aの笑顔ゲットしちゃった」
どうやら私が先生の方を向いた瞬間にスマホで写真を撮られたらしい。意地悪にニヤニヤと写真を見せられて、じわじわと顔が熱くなる。
「消してください!!」
「い・や♡」
「消して!」
「えー。じゃあ先生大好きって言ったら消してあげるよ?」
「先生だいすき。はい消してください」
「ぶーっ。心が微塵もこもってないので駄目でーす。じゃあ次のコーナー行こうか」
「もう、先生っ」
結局、先生は消してくれる気は無いらしい。
それでももう一度抗議しようと口を開きかける。が、声は思い通りに出なかった。
「(…………先生?)」
サングラスから覗く美しい瞳が、あまりにも優しい視線で私の写真を見ていたから。
ドクンッと小さく胸が鳴る。
…
今まで気づかなかった、けど。
五条先生はあんな目をして私を見てたってこと……?
気づかなかったから傷ついてばかりいた。
先生の言葉をそのまま意味通りに受け取っていたから。
でも、あんな目をしていると、気づいてしまったなら。
鼓動が落ち着いてくれない。心臓の主張が激しい。
私に忘れられるのが嫌なのは、面倒くさいからだと先生は言っていた。また一から関係を始めるのが面倒くさいと。
私は今までそれをそのままの意味で受け取って傷ついていた。
けど、もし、
……もしその言葉が別の意味を持つのなら。
「……A?」
ドキドキと煩い鼓動を抱えたまま、先生の服の裾をキュッと握る。
自惚れかな、名前を呼んでくれる声すら、以前よりも柔らかく感じる。
視線が絡まり合う。目は逸らさない。
あと必要なのはほんの一握りの勇気だけ。
「せ、先生は、」
声が震える。
陽が落ちてきて辺りが暗くなってくる。
ここが正念場だ。
「私のことどう思ってる……?」
もし、望んだ答えを貰えたら、
その時は、……。
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ぱぅち(プロフ) - レモン茶さん» こちらこそいつもあたたかいコメントありがとうございました!😭 レモン茶さんからコメント頂ける度に嬉しかったです!!これからも頑張ります!!💪 (2021年10月25日 22時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
レモン茶(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後まで本当に素敵なお話でした!また次回作があればまた読みたいです!ぱうちさん本当にお疲れ様でした! (2021年10月21日 20時) (レス) @page34 id: 7311114e12 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - さざんかさん» 最後までお読みくださりありがとうございました!😭 こちらこそ素敵なコメント頂けて本当に嬉しいです!私にとっても忘れられないお話しになりました✨ (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ナハマヤラさん» 最後までお読みくださりありがとうございました!😭更新が遅すぎた中でも最後までお付き合い頂いた読者様には本当に感謝でいっぱいです…!これからも頑張ります!💪 (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 白米さん» 白米さん!こちらこそ最後までお読みくださり、本当にありがとうございました!!😭 甘くない話を書いていると、読者様に楽しんでもらえてるかな…と不安になるのですが、そんな中でも白米さんにあたたかいコメントを頂けて安心してました笑ありがとうございました! (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2021年5月30日 21時