忘れたいくらい好きだった【呪術廻戦】

20-迷子の恋心 ページ21

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アポロを食べた瞬間、思い出してしまったんだ。

五条先生のことを。
そして、





「ある日突然、先生が『これ好きなんでしょ』って言ってアポロを渡してくれて。絶対話聞いてないと思ってたのにそんなことしてくれたからびっくりしちゃって。それがきっかけで意識するようになったんです」





五条先生を意識するようになった思い出の味を。味覚がまだ、五条先生のことを覚えていたんだ。思い出してしまえばもう、彼の元へ行くしかなかった。


なんでアポロなんか渡したの、
せっかく先生のこと忘れていたのに、と
八つ当たりをした。泣くしかなかった。


どうして、なんで、伝わらない？
先生の為に忘れようとしているのに。
好きだから忘れたいと願ったのに。

忘れることすら許してもらえないのなら、私の恋心の終着点は一体どこにあるというのか。忘れていられれば、恋心はもう終着点に辿り着いていたはずだ。

振られて、忘れることすら叶わず、まだ変わらず先生が好きだなんて、滑稽でしかない。









訳がわからないまま、五条先生と共にどこかの玄関にいた。靴を脱いで振り返ることなく進む五条先生に続いて靴を脱ぎ、後をついていく。高級マンションのモデルルームのような風景が広がっていた。リビングかな？

戸惑いを隠せず辺りを見渡していれば、「ちょっとそこ座って待ってて」と言われる。先生が指差したのはこれまた高そうなソファ。

先生はさっさとどこかへ行ってしまったので、気まずさを感じつつも言う通りにする。居心地は悪いが、ソファの座り心地は最高だった。


1人になり、ようやく肩の力が抜ける。
……もしかしなくても、ここって、……五条先生の家だよね。

怒涛の展開に頭が追いつかない。
一体先生は何考えてるの？

溜息を吐きながらモヤモヤと考えていれば、五条先生がわざとらしく明るい声で「おっまたせー！」と言って戻ってきた。

先生は普段の黒ずくめの姿から、ラフな格好にサングラスをかけた風貌になっていた。着替えてきたらしい。





「……どういうつもりですか？」

「わぉ！塩対応。まー、明日は土曜だから授業ないし、Aは午後までフリーだし、僕も夜まで休みだし、ここまで条件揃ってたらさあ……」





五条先生はキラッと効果音が鳴るようなドヤ顔をし、いつもよりちょっと良い声で言う。





「行くでしょ。デート！」

「、……はぁ？」






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