10-今だけは、 ページ11
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五条悟
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Aが僕の顔を忘れてからというもの、頭を撫でて思い出させるという行為をするようになった。
Aの呪いについて分かったこと。
それは一晩寝ると、忘却対象である僕のことを忘れてしまうということだ。
例えば今だと、頭を撫でて思い出してもらっても、一晩寝て翌日には僕のことを忘れている。僕の声と顔を忘れているから、また頭に触れるという触覚で記憶を呼び起こしてもらうんだ。
今日はまだAに会えていない。
仕事をこなしつつ、高専内を歩く。
廊下の曲がり角に差し掛かろうとした瞬間だった。
「わー!!どいてどいて!!」
突如トップスピードで駆け抜けているAが現れて。急ブレーキをかけようとしたけど無理だったみたいで、僕に突進してきた。ま、僕は最強なので1ミリもよろめくことなくAを抱き止める。
すると、Aはハッと何かに気づいたように、勢いよく顔を上げた。
「五条先生!五条先生だ!」
今日は頭を撫でたわけではないけど、抱き止めたことで思い出したらしい。
僕に会えて心底嬉しそうに笑うAに、心臓が丸ごときゅっと掴まれる。かわいい、なんて思ってしまったのはきっと、一生徒としてだ。
…
そう、言い聞かせないといけないのに。
「……先生?」
教師としての理性よりも、男としての欲が勝る。
かわいくて仕方ないこの子を、優しく腕の中に閉じ込める。
こんなことするべきではないと、してはいけないと頭の中で警鐘が鳴り響く。
それでも、今だけは手放したくなかった。
Aを振ったのは僕の方だった。
生徒だから無理、と正しい理由で断った。
もしその体のいい断り文句が使えない時が訪れるとしたら、僕はなんて答えるのだろう。
最近、こんなことばかり考えている。
ぎゅっとそのまましばらく抱き締めていると、バタバタバタッと足音が近づいてきた。Aは僕を押し返し、足音の方に振り向く。
「しゃけ!」
「あー、見つかっちゃったかあ。見つかったのって私が最初?」
「しゃけ。めんたいこ、ツナマヨ」
「おっけー。待機してるね。いってらっしゃーい」
どうやら2年生は高専の敷地内でかくれんぼをしており、棘が鬼で探しにきたらしい。いってらっしゃいと棘を見送るAの横で、頑張ってーとひらひら手を振った。
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ぱぅち(プロフ) - レモン茶さん» こちらこそいつもあたたかいコメントありがとうございました!😭 レモン茶さんからコメント頂ける度に嬉しかったです!!これからも頑張ります!!💪 (2021年10月25日 22時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
レモン茶(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後まで本当に素敵なお話でした!また次回作があればまた読みたいです!ぱうちさん本当にお疲れ様でした! (2021年10月21日 20時) (レス) @page34 id: 7311114e12 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - さざんかさん» 最後までお読みくださりありがとうございました!😭 こちらこそ素敵なコメント頂けて本当に嬉しいです!私にとっても忘れられないお話しになりました✨ (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ナハマヤラさん» 最後までお読みくださりありがとうございました!😭更新が遅すぎた中でも最後までお付き合い頂いた読者様には本当に感謝でいっぱいです…!これからも頑張ります!💪 (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 白米さん» 白米さん!こちらこそ最後までお読みくださり、本当にありがとうございました!!😭 甘くない話を書いていると、読者様に楽しんでもらえてるかな…と不安になるのですが、そんな中でも白米さんにあたたかいコメントを頂けて安心してました笑ありがとうございました! (2021年10月21日 17時) (レス) id: 50c1a80a5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2021年5月30日 21時