05-宴後の食堂 ページ5
.
海の底にいると、当然だが陽の光は浴びられない。
背もたれに寄りかかり、天井を仰ぐ。
……今、何時だ。
まだ朝ではないことは確かだろう。
体内時計はそこまで狂っちゃいないはずだ。
ずっと同じ姿勢を取っていたせいか、軽く体を動かしたくなった。読んでいた本を閉じ、自室を出る。目的地も決めずにただ船内を歩く。
流石にあの女の歓迎会とやらは終えたようだ。
宴のように騒がしかった連中の声が、既に跡形も無く消えていた。
特に用があったわけではないが、何気なく食堂の扉を開けると、そこには、
「……あ、トラファルガーさん」
大量のジョッキを抱えて片付けをしてる様子のAと、
「……こいつら、」
「あはは、皆さん良い飲みっぷりで」
明らかに出来上がった様子でテーブルに突っ伏したり、床にそのまま倒れ込んでたりして眠りについているクルー達。
歓迎会とは名ばかりで、こいつらは多分、好き勝手に飲みたかっただけなのだ。
その上居候にこんな醜態を晒し、舌打ちをせずにはいられなかった。
「……おい、お前は片付けするな」
「え？でも私、居候の身ですし」
「いい。こいつらにやらせる」
Aは喋っている感じも普通だし、きっと酒は飲まなかったのだろう。
居候とはいえ味方か敵かろくに信用もできない奴の目の前で、好きに飲んでこうも無防備に眠り呆けるとは。
女だからと言って油断はできない。
命を落とす瞬間は一瞬だ。海賊なら尚更。
涎を垂らして座って寝ているシャチの頭を叩く。
割と良い音がした。シャチは「いって！」と飛び跳ねるように起きた。
「……えッ 船長ォ？！」
「シャチ。今すぐ全員起こして片付けをしろ」
「りょ、りょりょ了解です！！」
シャチは立ち上がって敬礼ポーズを取り、「あ」と慌てて涎を拭う。そしてすぐに「起きろおめーら！」と奴らを起こしにかかる。
これでいい。
片付けくらいてめェらでしろ。
それでも残って手伝おうとするAの腕を引き、強制的に食堂を出る。
「あ、あの、私やっぱり手伝いに……」
「おれに逆らうな」
「えぇえ……」
「散らかした奴が片付ける。んなこと常識だろうが」
食堂から少し離れたところで手を離す。
おれの言い分を聞き、Aはきょとんとして、その後フフッとさっきのように口元を隠して笑った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 798人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱぅち(プロフ) - kiさん» わわ、ありがとうございます…！コメント頂けて本当に嬉しいです(^ ^)続編ではどんどん種明かしして参りますので…笑 続編でもよろしくお願い致します…（ ; ; ） (2020年4月5日 11時) (
レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ki(プロフ) - とても良くて思わず、初めて感想を書いてみようと思うほどでした。最後のシーンに驚きすぎて続編が楽しみです！無理せずに頑張ってください。ワクワクしながら待っています！ (2020年4月1日 3時) (レス) id: d59bd8fff6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 紗さん» あたたかいお言葉ありがとうございます…！（ ; ; ）まだまだ未熟ですが、文章を褒めてくださると本当に嬉しいです！続編も頑張ります！ (2020年2月4日 21時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
紗(プロフ) - 第一章おつかれさまでした！！表現の仕方とか素敵でとても好きです！更新ゆっくりでいいので、楽しみに待ってます！ (2020年2月1日 18時) (レス) id: d2cf8ed97e (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 氷屋さん» コメントありがとうございます！ほんとに些細な描写が繋がっていったりするので、気がついてもらえるととても嬉しいです(^^) これからも不器用なローさんを描いていこうと思います！頑張ります！ (2020年1月22日 22時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年9月28日 18時
