29-一方その頃船長は ページ29
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ログが溜まり、食料も十分積み終え、次の島を目指して航海している。
次の島で今度こそAを降ろすことになる。
「…」
ああ、ダメだ。集中できない。
読んでいる本を閉じ、椅子の背もたれに寄りかかる。
読書は嫌いじゃないのに、むしろ好んでいるというのに、内容が一向に頭に入らない。
こんなこと、初めてだった。
気分転換でもしようと、部屋を出る。
するとそれと同時に隣の部屋の扉も開いて。
「……あ、ローさんか。偶然ですね！」
…
前は、この笑顔を見ると頭が重くなるような感じがした。
でも。
「(今は、……)」
この信用ならない笑顔さえ、おれは
「私、ちょっと外の風に当たりたいなあって感じで出てきたんですけど、ローさんも一緒にどうですか？」
「……おれも、夜風に当たろうと思ってたところだ」
「あ、本当ですか？以心伝心ってやつですかね？」
相変わらずの笑顔を向けてくるAに、心臓が妙な動き方をして違和感を覚える。
以心伝心____。
相変わらず、こっちが予想もつかない発想をするもんだ。気持ち的には呆れているのだが、不思議と頬が勝手に少しだけ緩んだ。
それを、Aは見逃さなかったようで。
「ろ、ローさんが笑った……」
大袈裟なほど瞬きをしながら言った。
なんとなくバツが悪くて顔を隠すように帽子を深く被り直し、「……笑ってねェ」と手の甲でAの頭をこつんと叩く。
歩き出すとAも慌てて後を追ってくる。
「……わっ！？」
急に後ろから聞こえた叫びに咄嗟に振り向けば、船の振動に足を取られてしまったのか、Aが倒れ込んでくるところだった。
反射的に体で受け止め、片手を背中に回す。
Aは寄りかかったたまおれを見上げ、「す、すみませんでした……」と焦ったように謝る。
体が密着して、無意識に速まる鼓動。
女特有の柔らかさに、伝わって来る体温。
息の音が聞こえる。
離れるどころか、背中に回している手に力が入って。
「あの、ローさん……？」
おれの名前を呟くAの唇に目線が落ちる。
この前触れ損ねた反動か、触れてみたいという欲求がより鮮明に形になって。
彼女のそれにふにっと親指を当ててみる。
……やわらかい。
心地良い感覚にごくりと喉を鳴らす。
おかげであの欲求がますます大きくなっていく。
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ぱぅち(プロフ) - kiさん» わわ、ありがとうございます…！コメント頂けて本当に嬉しいです(^ ^)続編ではどんどん種明かしして参りますので…笑 続編でもよろしくお願い致します…（ ; ; ） (2020年4月5日 11時) (
レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ki(プロフ) - とても良くて思わず、初めて感想を書いてみようと思うほどでした。最後のシーンに驚きすぎて続編が楽しみです！無理せずに頑張ってください。ワクワクしながら待っています！ (2020年4月1日 3時) (レス) id: d59bd8fff6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 紗さん» あたたかいお言葉ありがとうございます…！（ ; ; ）まだまだ未熟ですが、文章を褒めてくださると本当に嬉しいです！続編も頑張ります！ (2020年2月4日 21時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
紗(プロフ) - 第一章おつかれさまでした！！表現の仕方とか素敵でとても好きです！更新ゆっくりでいいので、楽しみに待ってます！ (2020年2月1日 18時) (レス) id: d2cf8ed97e (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 氷屋さん» コメントありがとうございます！ほんとに些細な描写が繋がっていったりするので、気がついてもらえるととても嬉しいです(^^) これからも不器用なローさんを描いていこうと思います！頑張ります！ (2020年1月22日 22時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年9月28日 18時
