16-無自覚な芽生え ページ16
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呼び方一つで心ってのはこんなにも動くものなのか。
「じゃあ、私は戻りますけど……ローさんはどうします？食堂に行くか行かないか」
胸か心臓か、その辺りがざわつく。
しかし決して顔には出さない。
あくまで普通に。
「行かねェ。お前のホットミルクのせいでまた眠くなってきた」
「はは、その調子ですどんどん寝てくださいね」
ホットミルクの効果かは知らないが、眠気がまた体を包み始めているのは事実だった。ホットミルクのせいというよりは、普段の寝不足が起因してるからかもしれないが。
だから、思考回路がちょっとまともではなかったのだと思う。
「A」
「？はい」
口をついて出たのは、こんな馬鹿げた質問。
「故郷ってのは、そんなに帰りてェもんなのか」
言ってしまってから、しまったと口を閉じた。
何を、聞いたんだおれは。
こんな事今更聞いてどうする。
途端、Aの瞳に迷いが生じた。
一度俯いたかと思えばすぐにこっちを見る。
その顔には、……やはり笑みが浮かんでいる。
「帰りたいですよ、そりゃあ」
「…」
「私にとっての宝ですから」
普通の人間はそう思うのか。
普通の人生を歩んでこなかったおれは、きっと彼女を理解できることはないだろう。
考え、いやそもそも価値観が違う。
「早く、……早く帰りたい……」
マグカップを持つ手が小刻みに震えている。それは、Aの故郷に対する想いの強さを表していた。帰りたい、と懇願する姿はまるで大きな使命を背負ってるいるようだった。
それほどまでに大切な存在。
宝だと形容するくらい。
故郷ってのは大きな一括りに過ぎない。
そこには多分、家族とか友人とか、そんなもんが含まれていて。
これらを全部まとめて、故郷。
……帰りてェのか、こいつは。
「……なら、A」
_______この船で故郷まで行くか
頭に浮かんだ文を消去し、押し黙る。
片手で口元を覆い、目を見開く。
自分が今、何を言おうとしたのか。
驚いて平静を装うことも忘れてしまった。
Aは突然黙ったおれを不審に思い、さっきのように目を覗き込んでくる。
「ローさん？」
「！ッ……」
頬が熱を帯びていくのを感じた。
片手で覆ったまま誤魔化すように顔を背ける。
「……なんでもねェよ、もう行け」
……こんなんじゃ、こいつの思うツボじゃねェか。
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ぱぅち(プロフ) - kiさん» わわ、ありがとうございます…！コメント頂けて本当に嬉しいです(^ ^)続編ではどんどん種明かしして参りますので…笑 続編でもよろしくお願い致します…（ ; ; ） (2020年4月5日 11時) (
レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ki(プロフ) - とても良くて思わず、初めて感想を書いてみようと思うほどでした。最後のシーンに驚きすぎて続編が楽しみです！無理せずに頑張ってください。ワクワクしながら待っています！ (2020年4月1日 3時) (レス) id: d59bd8fff6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 紗さん» あたたかいお言葉ありがとうございます…！（ ; ; ）まだまだ未熟ですが、文章を褒めてくださると本当に嬉しいです！続編も頑張ります！ (2020年2月4日 21時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
紗(プロフ) - 第一章おつかれさまでした！！表現の仕方とか素敵でとても好きです！更新ゆっくりでいいので、楽しみに待ってます！ (2020年2月1日 18時) (レス) id: d2cf8ed97e (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 氷屋さん» コメントありがとうございます！ほんとに些細な描写が繋がっていったりするので、気がついてもらえるととても嬉しいです(^^) これからも不器用なローさんを描いていこうと思います！頑張ります！ (2020年1月22日 22時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年9月28日 18時
