11-知りたい ページ11
.
トラファルガーさん、と名を呼ばれて目を覚ませばその声の主はひょこっと顔を覗かせていた。
「……何の用だ」
「あ、いえ、立ったまま寝てるので部屋に戻ったらどうかと思って」
「別に寝てねェ。目閉じてただけだ」
「なるほど、そうなんですね」
私の早とちりか、
そう言ってこいつは頬をかいてへへっと笑う。
胡散臭さすら覚えるこいつの能天気な笑い方は、もはや代名詞になりつつある。本心を笑顔に隠した、腹の底が見えない奴。
おれはそう考えている。
……のに、
「じゃあ、私はこれで……」
「待て」
必要なことだけ話したらすぐに立ち去ろうとする彼女の手首を掴んで引き止める。
驚いたように振り向く彼女と目が合う。
「……お前は何故、海に出た」
掴み所の無いAのことを、知りたいと思ってしまった。
それは船長としての責任感としてか、それとも単なる興味か、……はたまた別の感情からか。
カモメが遠くで鳴いている。その鳴き声ははっきりと聞こえるのに、
「______」
目の前にいるこいつの声は波にさらわれて、上手く聞き取れなくて。
よく聞こえなかった、と素直に聞き返せば、風に弄ばれる髪を押さえ、眉を下げて儚い笑みを浮かべる。
言葉を言い換える気配がした。
「最初に言ったじゃないですか。あの島を観光するためだって」
Aは多分、さっきと同じことを言わなかった。
元々、こっちに聞かせるつもりもなかったのだ。
それが手に取るように分かってしまった。
だから、「小せェ理由だな」と悪態付くことがせめてもの対抗だった。
違う。違うだろ。
Aは今、何かを隠した。
「海にに出る理由に小さいも大きいも無いですよ」
「…」
「大事なのは命を賭ける覚悟があるかないか」
「じゃあ覚悟はあるのか、お前に」
Aは目を細め、妖しく上げた唇で「さあ？」と首を傾げて笑う。
その仕草は年齢以上に大人っぽいものに見えた。
……まあ、こいつの歳なんて知らないが。
兎に角、普段のふざけてる雰囲気とはまた大分違った。返事はふざけたものだったけどな。
「じゃあ！私はこれで失礼します」
と思えばまた馬鹿みたいにヘラヘラして去っていった。
わけ分かんねェ。
あいつのことはやっぱりまだ掴めないし、
あいつを咄嗟に引き止めてしまった自分のことも、
……分からねェ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 798人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱぅち(プロフ) - kiさん» わわ、ありがとうございます…！コメント頂けて本当に嬉しいです(^ ^)続編ではどんどん種明かしして参りますので…笑 続編でもよろしくお願い致します…（ ; ; ） (2020年4月5日 11時) (
レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ki(プロフ) - とても良くて思わず、初めて感想を書いてみようと思うほどでした。最後のシーンに驚きすぎて続編が楽しみです！無理せずに頑張ってください。ワクワクしながら待っています！ (2020年4月1日 3時) (レス) id: d59bd8fff6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 紗さん» あたたかいお言葉ありがとうございます…！（ ; ; ）まだまだ未熟ですが、文章を褒めてくださると本当に嬉しいです！続編も頑張ります！ (2020年2月4日 21時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
紗(プロフ) - 第一章おつかれさまでした！！表現の仕方とか素敵でとても好きです！更新ゆっくりでいいので、楽しみに待ってます！ (2020年2月1日 18時) (レス) id: d2cf8ed97e (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 氷屋さん» コメントありがとうございます！ほんとに些細な描写が繋がっていったりするので、気がついてもらえるととても嬉しいです(^^) これからも不器用なローさんを描いていこうと思います！頑張ります！ (2020年1月22日 22時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年9月28日 18時
