05-泣きたいくらい ページ5
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嵐のような男がいなくなって、1人になるとやっと落ち着ける。
気が抜けると力も抜けて、額に手を当てたままその場に座り込む。
温もりが消えてくれない。
おでこにキスをされた時だって、
雑誌を拾おうとして手を握ってきた時だって、
あんなにも優しく触れてきたことなんか、一度もなかった。
恋人でも何でもない私に、どうしてあんな触れ方したの?
答えは見つからないままで、けれどどうしようもなく泣きたくなった。
わからないままでいるのがこんなに苦しいとは思っていなかった。
リビングに戻った頃には既に0時を過ぎていた。
翌日、仕事が終わって家に帰ると
「あ、おかえりー」
悟くんがオムライスを作って待っていた。
合鍵を渡したとは言っても、これまでほとんど使ってこなかったくせに。
2日連続で家に来ることだって、なかったくせに。
やっぱりあれは本物の惚れ薬なの?
「……暇なの、悟くん」
「暇じゃないよ。暇じゃないけど会いたいから来たんだよ。愛のパワーってやつ?」
「不法侵入で通報する」
「いや合法!合法侵入だからね!」
なにそれ、と思わず吹き出してしまうと、悟くんも安心したように笑う。
ひとまず荷物を自室に置きに行き、台所に戻る。
「なんか手伝うことある?」
「いやーもう盛り付けるだけだし大丈夫」
「そっか、ありがとう。じゃあ片付けは私がやるね」
「ありが____いや、いいよ僕が片付けるから」
「でもっ」
流石に仮にも客人にやらせてばかりなのは心苦しい__そんな至って普通のジャパニーズマインドで申し訳なさそうにしていると、悟くんはニコッと笑った。
何か嫌な予感。
「ま、報酬は貰うけどね」
「ほ、報酬?」
「うん」
「ちゅーしてよ」
「ここに」と少し腰を曲げて自分の頬をトントンと指差す。
…
やっぱ私、からかわれてるのかな。
「いっ!」
迷わず彼の足を踵で思い切り踏んづける。
悟くんはその場に蹲って足を押さえる。
いい気味、なんて思うくらいは許して欲しい。
「じゃ、片付けは私がやるから」
ばーか。
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ももか(プロフ) - 自分に引くほど、めっちゃニヤニヤしながら読んでました……最高すぎました!!これからも頑張ってください!!!!!! (2021年2月21日 20時) (レス) id: 962a75c0d9 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - あおいさん» 文章褒められるとめちゃくちゃ嬉しいですー!( ; ; )こちらこそ、お読みくださり本当にありがとうございました!! (2021年2月10日 17時) (レス) id: 4a1d1da0e2 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 語彙力の塊すぎて…素晴らしい作品をありがとうございました! (2021年2月8日 0時) (レス) id: c6e7ce5294 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - #ゆー@金欠民族さん» めっっちゃ面白かったなんて光栄です…(^^) 暖かいコメント嬉しいです!最後までお読みくださりありがとうございました! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 4a1d1da0e2 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 輪廻@サブ垢なのだー!さん» 完結後もお会いできて嬉しいですー!( ; ; )暖かいお言葉を貰えて本当に嬉しかったです…!今次の作品を考えているところです。最後までお読みくださりありがとうございました! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 4a1d1da0e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2021年1月26日 17時