10-冬と追憶(2) ページ10
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その日は久し振りに普通の平日に友達の家で夕飯を食べて過ごした。
次の日辛くなることはわかっていたけど友達に会えたのが嬉しくて、お酒も飲んでしまった。
終電間際で帰って、家に着いたのはすっかり夜中。
昼間に比べるとだいぶ冷え込んでいて、マフラー巻いてきてよかったなあ、と呑気に考えながらエレベーターで上がった。
そして家の扉の前まで来て、絶句した。
酔いも一瞬で冷めてしまった。
「さ、悟くん!?」
「あ。やっと帰ってきた。おかえりー」
「おかえり、じゃないでしょ?!いつからそこにいたの!」
「んー、忘れちった」
マフラーをしていない彼の頬や耳はすっかり冷えて赤くなっていた。
そんな姿を見ていられなくて、すぐに家に招き入れる。暖房を付けて、悟くんをソファに座らせている間に温かいミルクティーを作る。
同じものを自分にも作り、ソファに並んで座る。
悟くんはミルクティー飲んで「ほわぁ〜、あったまるー」と幸せそうに表情を緩める。
「流石に連絡してくれればよかったのに」
「いやー、けど君が彼氏と居るんなら申し訳ないなあと思ってさ」
「……そんな気ぃ遣ってくれるなんて珍しいね。あと今彼氏はいない」
「ふはっ そっか」
「悟くんこそ、ずっと待ってないで彼女の家であったまってればよかったじゃん」
「別れた」
「……そっか」
「だから、あっためてくれるのは君しかいないよ」
都合の良いことを言って、甘えるように私の肩に頭を擦り付けてくる彼を、突き放すことだけはどうしてもできなくて。
だから、私はその日、悟くんに合鍵を渡してしまったんだ。
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悟くんは「私が彼氏といるかもしれない」から、連絡をしてこなかった。
彼氏といるなら、邪魔する気はないと言い切った。
それはつまり、どこからどう見ても脈無しってことで。
合鍵を与えた代わりに、彼との未来が失われた気がした。
ここまで遠回しに振られたんだ。
だから『好き』だなんて、信じられるはずがない。
それは彼の本心ではなくて、やっぱり惚れ薬によるものなんだ。
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ももか(プロフ) - 自分に引くほど、めっちゃニヤニヤしながら読んでました……最高すぎました!!これからも頑張ってください!!!!!! (2021年2月21日 20時) (レス) id: 962a75c0d9 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - あおいさん» 文章褒められるとめちゃくちゃ嬉しいですー!( ; ; )こちらこそ、お読みくださり本当にありがとうございました!! (2021年2月10日 17時) (レス) id: 4a1d1da0e2 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 語彙力の塊すぎて…素晴らしい作品をありがとうございました! (2021年2月8日 0時) (レス) id: c6e7ce5294 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - #ゆー@金欠民族さん» めっっちゃ面白かったなんて光栄です…(^^) 暖かいコメント嬉しいです!最後までお読みくださりありがとうございました! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 4a1d1da0e2 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 輪廻@サブ垢なのだー!さん» 完結後もお会いできて嬉しいですー!( ; ; )暖かいお言葉を貰えて本当に嬉しかったです…!今次の作品を考えているところです。最後までお読みくださりありがとうございました! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 4a1d1da0e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2021年1月26日 17時